リスクと向き合う:メンタルヘルス検査 焦る厚労省
毎日新聞 2012年05月03日 10時23分
08年度に始まった特定健診・保健指導制度もその一つだ。メタボリックシンドローム対策(肥満対策)に特化して、心筋梗塞(こうそく)など心血管疾患の予防を目指すものだが、日本人の肥満者の割合は海外より極めて低く、心血管疾患の発症にも肥満の有無は関係ない。導入前から「肥満に特化した健診は、本来指導が必要な人を見落とす」と、反対する専門家は多かった。
だが、健診見直しは、当時の自民党政権が実現を目指していた医療制度改革の一環。厚労省は、批判を振り切って法案化し、与党と一体となって成立にまい進した。結果として健診受診率は下がり、必要な指導ができない現場に混乱が広がった。厚労省は、肥満以外の人への対策に乗り出さざるを得なくなり、来年度から実施する。
「国の財政が厳しくなり、国民に負担を求める政策が増えた。(将来を見越した政策より)分かりやすく、世間受けする政策に政治家も官僚も飛びつくようになった」と、厚労官僚として医療制度改革に携わった村上正泰・山形大教授(医療政策学)は話す。