リスクと向き合う:メンタルヘルス検査 焦る厚労省
毎日新聞 2012年05月03日 10時23分
自殺・うつ病という現代社会のリスク軽減を図ろうと、厚生労働省はメンタルヘルス(心の健康)検査の義務付けに向け準備を整えた。「それがかえって混乱を生む」という批判をかいくぐって進む姿からは、リスクと向き合う真摯(しんし)さより、走り出したら止まらない官僚の習性が垣間見える。
◇学会要望に撤回働きかけ
法制化を巡り、厚労省の焦りを印象付ける出来事があった。
<「今求められるメンタルヘルス対策、法律改正への要望」の一部改正について>
4月20日夕、産業医や保健師らが集まる日本産業衛生学会のホームページ(HP)に掲載されていた大前和幸理事長(慶応大教授)名の要望文の内容がこのように差し替えられた。
学会は3月上旬、事業者に従業員のメンタルヘルス検査を義務付ける労働安全衛生法改正案に反対を表明する要望文をHPに掲載。厚労省が標準例とする検査項目の妥当性や、精神医療現場へのしわ寄せなどへの疑念を示した。
ところが、新たな要望文からは「反対」の文言だけが消えた。学会幹部が内実を明かす。