触るな!危険!「路傍の土」

 歩道を歩いていると、道の端に黒っぽい土を目にする。少し水分を含んで粘土質の所もあれば、乾いてひび割れたような感じになっている所もある。砂や落ち葉などが混ざっている場所もある。

 こうした所は、非常に放射線量が高いケースが多いという。

 東京都葛飾区の水元公園で5月27日、今の放射能の現状について勉強する催しが開かれた。集まった約90人の参加者は、持参した放射線測定器をおのおの、道の側溝に置いた。すると、「0.79」「0.86」「0.759」(単位はいずれもマイクロシーベルト/時)と高い数値を示した。この日の東京都新宿区の空間線量はだいたい0.05程度。測定条件などが異なるため、単純比較はできないが、放射線測定器が示した数値はケタが一つ違う。

 原発事故から1年2か月余りたった今でも、都内で放射線量が高い所があるのはなぜなのだろう。

 勉強会で講師を務めた群馬大教育学部の早川由紀夫教授(火山学)によると、計測された放射性セシウムのほとんどは、原発事故が起きた直後の3月21日~23日頃、雨とともに関東地方に降り注いだものだ。アスファルトの場合、放射性セシウムが表面に留まって動きやすい。雨が降ったり風が吹いたりすることで、土とともに道の端に寄せ集められ、高濃度になっていくのだという。

 早川さんはこれらの土を「路傍の土」と呼ぶ。「路傍の土は、自然の除染システムの産物で、粘土分が多い程、放射線量が高い傾向にある。これらを取り除くことで、少なくともその部分は除染できる」と説明する。早川さんは、路傍の土の広がりを調べた地図を作成し、自身のブログで公開している(http://kipuka.blog70.fc2.com/blog-entry-489.html)。早川さんは「汚染された地域では、子どもの校外学習などは避けるべきだ」と警告する。

 また、季節の変わり目である4、5月は風が強い日が多く、地表に降り積もった放射性セシウムが空間に舞って、草木に付着しやすい。お茶の葉などからいまだに放射性セシウムが検出されるのは、そのためなのだそうだ。

採取した土から1キログラムあたり24万ベクレルの放射性セシウムを検出した地点(東京都江戸川区)
5月30日早朝は、2.25マイクロシーベルト/時を示し、3月に測定した時とあまり変化がなかった

 勉強会を主催したのは、「NO!放射能『東京連合こども守る会』」だ。原発事故から3か月後の6月、子どもたちを放射線被曝(ひばく)から守ろうと都内各地で立ち上がった会の連合だ。

 福島県南相馬市で2012年2月、放射線量の高い謎の黒い粉が相次いで見つかったとの一部報道を受け、同会代表の石川あや子さん(34)が3月、江戸川区や江東区の道端にある黒い土を集め、専門家に放射性セシウムの測定を依頼した。すると、江戸川区のある地点で採取した土が1キログラムあたり24万ベクレルと高い値を示した。この地点に放射線測定器を置くと、2.374マイクロシーベルト/時だった。

 今回の勉強会は、こうした結果を受け、身近にどれだけ放射線被曝の危険が潜んでいるかを認識しようという目的で行われた。石川さんは「子どもは落ち葉や土をすぐに触りたがります。実際、24万ベクレルの土を採取した場所を訪れるたびに、子どもが土に触れた形跡を目にします」と話す。

 5月30日朝、石川さんと、子どもたちの通学路になっている路上を歩いてみた。前日、雨が降ったこともあり、路上の隅には、砂が混じった黒い土があちこち見られた。そうした部分に放射線測定器を置いてみると、中には、1マイクロシーベルト/時以上と高い数値を示した所もあった。石川さんは「被曝の危険が身近にあることを感じています」と危機感を募らせる。


 東京都環境局では、23区東部にあたる葛飾区、足立区、江戸川区の空間放射線量が比較的高いとし、水元公園、中川公園(足立区)、篠崎公園(江戸川区)のうち、雨水が集まる所や植物の根元など39地点を選び、2011年11月から定期的に放射線量を測定している。その結果はホームページ(http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/policy_others/radiation/index.html)で公表している。

 担当者は「時間の経過ともに放射線量は減ってきている。今後も継続的に調査を続けていく」としている。調査ポイントは公園内に「調査中」という張り紙があってフェンスで覆われているそうだ。


東京都江東区内の歩道の隅にある土の放射線量を測る石川あや子さん
放射線測定器の数値は、1.107マイクロシーベルト/時を示している

 放射性物質がたまりやすいとされる雨水が集まる道路や駐車場などの隅で見られる黒い土がまさに路傍の土だ。放射線量は、高いポイントから離れる程、減っていく。路傍の土には、近寄ったり触ったりしないよう心がけてほしい。特に子どもたちには。

◇        ◆         ◇

 コラム「放射能と向き合う」は、医療情報部の利根川昌紀記者が担当しています。 ご意見・情報は こちらへ。

2012年5月30日 読売新聞)

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