〔アングル〕消費増税修正合意、党内基盤低下覚悟で首相が決断 「造反は30─40」との声も
[東京 16日 ロイター] 「解散」か「退陣」か。野田政権の命運を左右する社会保障・税一体改革関連法案をめぐる民主・自民・公明3党による修正協議は、最低保障年金制度など民主党の主要政策の「事実上の棚上げ」で決着した。民主党内では、衆院採決・成立を優先して譲歩を重ねた野田執行部への不満が高まっている。衆院採決での造反は「せいぜい30─40人程度」(政治アナリスト・伊藤惇夫氏)で否決の可能性は低いとの声もあるが、党内情勢は緊迫している。党分裂含みとなることは覚悟しているともみえる野田佳彦首相の決断だったが、法案成立まで紆余曲折ありそうだ。
<民主党内の反発、勢い増す>
修正協議の合意内容には、消費増税反対を明言している小沢一郎元代表とそのグループに加え、中間派が猛反発。小沢元代表は「政権交代時に主張した施策をかなぐり捨ててでも、消費増税を実現しようという動きがある。それはわれわれ自身の自殺行為で国民に対する冒涜(ぼうとく)、背信行為だ」(14日グループの会合での発言)と語気を強める。
15日には、中間派の田中慶秋副代表が修正協議の報告・了承の場として両院議員総会か懇談会の開催を求める154人分の署名を輿石東幹事長に提出した。関係者によると、賛同者はさらに増えているという。鹿野道彦前農水相は「(党内手続きを)強行すると党が分裂する」と警告し、民主的手続きを求め、政調会長一任をけん制した。
15日夕には実務者が経過報告を行ったが、党内情勢は一段と緊迫している。週明け18日から、正式に党内手続きに入るが、修正案の了承が得られるかは不透明な情勢だ。
<造反は30─40か、「自民党賛成で可決へ」との見方も>
それでも、政治評論家は「民主党が分裂することはない」(岩井奉信・日大法学部教授)とみる。政治アナリストの伊藤惇夫氏も「採決で、自民党が賛成に回れば、否決される可能性はない」とし、民主党内の造反は「せいぜい30─40程度。(反対票を投じるというより)ほとんどが欠席だろう」とみている。
野田首相の強さは「党内基盤が崩れることを覚悟で、根性で、採決の道を貫いた」(日大・岩井氏)こと。周辺筋も、党内融和を優先した採決先送り論に「首相の採決の意思は固い。解散もいとわない」とけん制し、選挙基盤の弱い議員が多い反対派への無言の圧力にもなっているもよう。
政策論的には、持続可能な社会保障制度の構築と財政再建に向けた意志を貫き、「日本が(消費増税を)やると評価できる結果」(日大・岩井氏)で、求心力低下と引き換えに、国際的な評価は得られるという。
<自民は解散戦略再検討迫られる可能性、年内解散観測も>
一方、自民党は修正協議を通じて民主党を分断し、衆院解散に追い込むのが目的だった。協議の過程で、谷垣禎一総裁は民主党マニフェストの実現性の乏しさを「デマゴーグ」と批判し、看板政策の「事実上の棚上げ」合意で、民主党の分断を狙った。
造反規模が小規模にとどまれば、自民党の狙い通りとはならず、解散戦術の再検討を迫られることになるが、その場合でも自民党にメリットはあるという。
早期解散説に対しては、自民党内も一枚岩ではない。党の長老中心に「次の衆院選では自民党の勝利が見込まれ、急ぐ必要はない」(岩井氏)との考えがあり、消費税引き上げが争点化しない選挙のほうがやりやすいとの心理があった。最終盤では「解散と消費税法案を直結させれば、自民党が消費税引き上げの主犯とみられ、選挙への圧力になる」(伊藤氏)との判断も働いたもよう。
谷垣総裁は15日夜のNHK番組で「これだけ大きな問題で公約と違うことをやれば、どこかで信を問わざるを得なくなる」と述べ、いずれ、民主党政権は解散に追い込まれるとの認識を示した。
解散総選挙の時期については「年内が落としどころ」(伊藤氏)、「11月ごろには衆院解散・総選挙」(岩井氏)など、年内の可能性を指摘する声がある。
(ロイターニュース 吉川 裕子;編集 石田仁志)
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