社説:民自公修正合意 「決める政治」を評価する
毎日新聞 2012年06月16日 02時30分
2大政党の党首が主導し、政治は崖っぷちで踏みとどまった。税と社会保障の一体改革関連法案の修正協議で民主、自民、公明3党が合意した。焦点の社会保障分野は民主党が公約した最低保障年金制度創設などの棚上げで歩み寄った。
民主党政権の発足以来、初めてとすら言える「決める政治」の一歩であり、歴史に恥じぬ合意として率直に評価したい。だが、民主党内の対立は分裂含みで激しさを増しており、今国会成立というゴールまではなお、不安要因を抱えている。
野田佳彦首相は党内のかたくなな反対勢力と決別し、ひるまず衆院での採決にのぞむべきだ。より広範な国民理解を実現するため、参院での審議などを通じ与野党は制度設計の議論を続けねばならない。
党分裂おそれず採決を 民主党にとって譲歩に譲歩を重ねてようやくつかんだ、満身創痍(そうい)の合意である。とはいえ、首相が政治生命を懸けた消費増税で主要3党の共通基盤を築いた意味には極めて重いものがある。
民主、自民両党とも複雑な内部事情を抱えつつ合意にたどりついたのは、日本が抱える財政危機の深刻さの裏返しだ。国と地方の債務残高が1000兆円規模に達する中で、増加する社会保障費への対応を迫られるという異常な状態だ。「決められない政治」からの脱却を目指し、混乱を回避することで既存政党が最低限の責任を果たしたといえよう。