立ち読み週刊朝日

北原みのり氏がCM「股間が痒くなる~」を嫌悪する理由


 コラムニストの北原みのり氏は、男性器に塗るクリームのCMで「イヤだ」と思ったという。そして考えた末、そのCMの何が「イヤ」だったのかわかったといい、理由をこういう。

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 今年のCMを見て分かった。電車の中でネクタイをしたサラリーマンがスキップしながら「股間が痒くなる~」と歌うのを聴いた時に、何がイヤなのか、きちんと分かったのだ。

 公共過ぎる。それに尽きる。

 はっきり言って、職場とか電車という場所は、女にとっては最もペニスに黙っていて欲しい公共の場なのである。電車なんて、特にペニスを意識したくない空間だ。

 もちろん女性向けにも同様に「デリケートゾーンの痒み」を鎮める薬があり、そのCMもある。例えばそれはお昼休みのOLたちが公園風な場所で「痒いのは恥ずかしいことじゃないよ」と共感を求めるように淡々と語るCMだ。ゲスな勘ぐりをキッパリ排除! という感じで、プライベートゾーンへの配慮を寄せている。"デリケートゾーン"という言い方も、相当考えられた言い回しだろう。

 一方、「痒い!」と男だけで電車や職場で大合唱する感じからは、ペニスのプライベート&デリケート感ゼロである。「股間!」と明るく言い放つ感じは、「チンコ!」と言って喜ぶ小学生男子レベルの〈笑〉である。

 男は黙って痒がれ! とは思わない。ただ、なんか、ペニスってお気楽でいいね、気をつかわなくていいね、オバカでいいねって感じだ。男の性器の明るさと堂々たる"公共性"、それは女が女の性器から見える世界とあんまりにも違う。そのあからさま、がイヤです。

▼この記事は「週刊朝日」の連載「ニッポンスッポンポン」を、編集部で抜粋、再編集しました。 全文は2012年6月22日号で読めます。
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