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大飯再稼働、消費地の理解不可欠 国論二分、顕在化した深い溝
(2012年6月17日午前8時13分)
昨年3月の東京電力福島第1原発事故から1年3カ月。野田佳彦首相は16日、関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働を最終判断し「原発稼働ゼロ」は終わることになった。しかし、原発に対する国民の不信感は強く、国論を二分する状況。推進派と反対派だけでなく、電力供給地と消費地の深い溝も顕在化させた。大飯原発の再稼働は入り口にすぎない。原発が直面する諸課題を解決するには、「二項対立」の解消が不可欠との声も聞かれる。
16日午前、官邸3階の会議室。硬い表情の西川知事は、テーブルを挟んで向き合った野田首相や関係閣僚に対し「原発の意義、重要性を十分に理解されることが大事だ。立地地域と消費地が対立したり、いがみ合うということではいけない。理解と協力が極めて重要」と訴えた。
政府が4月に再稼働への地元協力を求めてから約2カ月。特に、おおい町会が5月14日に再稼働容認を決めて以降、地元は「立地悪者論」「加害者論」にさらされ、役場や町長宅には悪意を含んだ抗議の電話、メールが相次いだ。
「ややもすると、今まで原発が立地自治体のエゴで動かされてきたと誤解されるような論調がある」。6月14日の県会全員協議会で仲倉典克議員はこう指摘。消費地が被害者で供給地は加害者という、いびつな構造が生まれていると憂慮した。
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関西電力は東京電力同様、地方に造った原発で発電し、都市部に供給している。八木誠社長は「消費地と供給地の両方の立場が分かっている」としながらも、「これまでも消費地の理解を得る対応を続けてきたつもりだが、活動がいまひとつ十分でなかった」と率直に認めた。
無理解、無関心は原発草創期からあった。ときには風評被害も生んだ。放射能漏れ事故が起きると、環境への大きな影響はなくても、観光客が減り、地場の食材は売れなくなった。
元県原子力安全対策課長の来馬克美福井工大教授は「30年、40年と溝を埋める努力はしてきた」と語る一方、福島の事故や大飯原発の再稼働問題で「残念ながら振り出しに戻った」とみる。
関心や理解のなさは、受益者も痛みを分かち合うべき使用済み核燃料の中間貯蔵施設の立地といった課題が進まない一因にもなっている。
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県内に立地する商業用原発は、13基のうち8基が運転開始から30年を超えている。政府の方針通り「原則40年運転」が実施され、増設がない場合には、県内原発は8年後に5基となる計算だ。
原発政策が大転換すれば、一気に“廃炉時代”が本格化する。
首相らとの会談で知事は「国策で原発を立地させ、国策によって廃炉とする議論が進むならば…」と言及し、特別立法による立地地域の支援を求めた。将来のエネルギー構成をどう選択するかで、嶺南地域をはじめとする本県の将来像を描き直す必要があり、その場合には消費地を含めた国民の理解も必要になる。
「福井と関西、供給地と消費地は単に電気だけでつながっているわけではない。観光、経済、人の交流など多面的に考え、双方が歩み寄らないと対立構造は変わらない」と来馬教授。ただ、短期間での解決は難しく「時間をかけて対話していくしかない」と語る。
西川知事が首相に要望した8項目でも、1番目には「国民、消費地の理解を深めてほしい」が挙げられた。
