郷土の歴史を地元の人や子どもたちに知ってもらおうと、東京都世田谷区立若林小学校(若林5丁目)に、郷土資料や明治時代の写真などを展示した歴史資料館がオープンした。開館を知った約60年前の卒業生も来館して旧交を温めたほか、児童の学習などにも役立っている。
資料館は2階の空き教室を利用してつくられた。入り口には、手作りの木のひさしや「若林小学校と若林の郷土歴史資料館」と書かれた看板を設置。展示品のパネルやケースなども全て自前でそろえた。
展示されているのは、関東大震災直後の松陰神社の様子や、歴代卒業生の集合写真など計約千点。同校の前身となる「太子堂郷学所」の提唱者の斎藤寛斎氏の写真や、郷学所の校舎を再現した模型などもある。
郷学所の創設は1871(明治4)年。子どもたちが学べる場所をつくろうと、近隣の人たちがお金を出し合ってつくったとされ、現在、都内では2番目に古い歴史を持つ小学校という。
資料館づくりのきっかけは、昨年の創立140周年事業だった。郷土の歴史を残すため以前から資料の展示活動などに取り組んできた地元の若林町会と、校内に点在する資料を活用したい学校の思いが一致した。
これまでも10年ごとの記念行事では、同町会の協力を得て郷土資料を展示している。だが、終了後は再び倉庫などに分散されてしまい、「貴重な資料が体系立てて整理できていなかった」と、布宮英明校長(49)は話す。
若林町会の月村雅一さん(62)も「学校に残された資料と町会のものを合わせ、充実した資料館をつくりたいと思っていた」という。
2010年の夏ごろ、140年の記念事業で話し合いを重ねるうちに、布宮校長と意気投合。少子化による児童数の減少で生じた空き教室を使い、常設の資料館づくりが決まった。
住民からも資料の提供を受けて、昨年12月に開館。月村さんは「地域の人たち、子どもたちにも地元の歴史に愛着を持ってもらえるよう、企画展もやっていきたい」と意気込む。
見学は無料だが、校内にあるため事前に予約が必要。学期ごとに1回ある学校公開週間には自由に見学できるという。詳しくは同校(03・3413・0654)へ。(杉崎慎弥)