インサイダーで
東電に1000億円損をさせた野村
テレビやバッグなどの贈り物を43回(計32万円)、会食を39回(計89万円)――。たった9カ月の間に、野村證券の営業マンが旧中央三井アセット信託銀行(現三井住友信託銀行)のファンドマネージャーを「接待」した中身である。
だが最大のプレゼントはインサイダー情報だった。
「野村の男性営業マン2人は、自社が主幹事を務めるみずほフィナンシャルグループの増資情報を漏らし、ファンドマネージャーは公式発表(10年6月)の前日にこれを売り抜けた。さらに野村の別の女性社員は、中央三井の別のファンドマネージャーに、同時期に行われた国際石油開発帝石の増資情報も漏らしていた。
見返りに、野村が主幹事を務める別の増資案件で、一定数の株式を引き受けてもらったり、大口売買の取引先に選んでもらおうとの意図があったようです」(社会部記者)
野村は同年9月に発表された東京電力の増資でも、米ファースト・ニューヨーク証券に対し、国内のコンサルティング会社の女性役員を通じインサイダー情報を伝えていた。
「SESCは昨年初夏から野村に検査官を送り込み、毎日のように社員を個別に呼び出しヒアリングを実施していた。特別検査はほぼ終了しており、6月27日の株主総会や、野村が主幹事に名乗り出ているJT株の売り出しの詳細決定などのタイミングを勘案し、処分勧告が下される見込みです」(同前)
業界最大手が投資家を欺いた罪は重い。東電の増資では情報漏洩に伴う株価急落が原因で、資金調達額が予定より1000億円以上も目減りした。その損失分を被らされるのは、東電の一般利用者である。
野村證券は4月に渡部賢一前社長がグループCEOに退き、法人営業畑の永井浩二社長が就任。「最初から永井氏に責任をかぶせるつもりだったのではないか」(経済部記者)との声もある。
渡部氏の自宅を訪ねたが、本人がインターホン越しにやや疲れた感じの声で「広報通してもらえますか。今、その辺(軒先)におられると色々あるんで」と、近所迷惑とでも言いたげな様子だった。
だが、迷惑を被ったのは多くの一般投資家である。市場の公正性を侵し、顧客に損失を与えるような証券会社には、厳しい処分を下すべきだ。
※この記事の公開期間は、2015年06月13日までです。
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