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【放送芸能】

放送されないもう一つのラジオ 文化放送 ポッドキャスト番組「ルネッサンスラジオ」

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 文化放送に「髭(ひげ)男爵 山田ルイ53世のルネッサンスラジオ」という番組がある。でも、ラジオでは聴けない。パソコンなどに取り込んで聴く「ポッドキャスト番組」として毎週水曜に新作が無料で配信されている。世知辛い世の中で、もうかるとも思えない番組が存続できているわけは−。 (宮崎美紀子)

 貴族キャラと、「ルネッサ〜ンス!」と乾杯する芸風でブレークしたお笑いコンビ「髭男爵」の山田ルイ53世がパーソナリティーを務める「ルネッサンスラジオ」は、ポッドキャスト限定の番組。

 山田のフリートークやメール紹介で構成されているが、売れている芸人や番組を片っ端からくさし、最近の仕事や出来事をグチるなど、とにかくネガティブ。でも、「前向き」「元気」が良しとされる今、これが妙に居心地よく、「クズ」「社会不適合」を自称するリスナーたちと奇妙なコミュニティーを形成している。

 番組は地上波で二〇〇八年秋に始まった。最初は午前一時半からの放送だったが、半年後に明け方、さらに半年後に夜に移され、一〇年春に終了した。

 「最初の半年で髭男爵の人気が急速に下がり、改編のたびに終わるかもって話が出ていた」。加藤慎二郎ディレクターは身もふたもないが、山田の話術に天性のものを感じ、ポッドキャスト限定で続くことになったという。

 今はスカパー!がスポンサーになり、関連のゲストコーナーが設けられ、ギャラも出ているそうだが、当初は山田も、構成作家で番組にも出演している宇野智史さんもノーギャラ。逆境で山田のひがみがエスカレート、「最初は毒にも薬にもならなかった番組」(加藤さん)が、がぜん面白くなり、最近ではダウンロード数が伸びているという。

     ◇

 ラジオ局は今、AM放送以外にもさまざまな方法で番組を出している=図参照。ポッドキャストもその一つだが、CMは入らないのに無料配信で、経営上のメリットが見えない。

 同局の片寄好之編成局長は、ポッドキャスト番組には二種類あるという。

 一つは人気番組「大竹まことゴールデンラジオ!」のポッドキャスト版のように、聞き逃した人のためのサービス。一方、「ルネッサンス〜」は地上波では作れないものを試す実験の場で、存続したのは「作り手の熱意」という。

 熱意が通用するのは「ラジオはテレビほどお金がかからない。作家と出演者がノーギャラでいいなら、社内の設備だけで作れちゃう」からだという。野球中継のナイターオフ期、この番組は系列の地方局に提供されており、制作を期待される在京局の使命も果たしている。

 片寄局長は「(山田は)貴族のくせに、ひがみっぽい」と苦笑しながらも、地上波で冠番組を持つようになれば見返りはあると期待する。

◆山田ルイ53世 ねたみ絶好調

 収録後の山田に、鋭い悪口について聞くと、「ひがんでいるだけなんです」。そして「文化放送社屋に番組の横断幕張ってもらって大々的に始まった時は、売れてましたからポジティブなことしか考えないですよ。文化放送に雑に扱われ始めてからですね、番組がどんどんゆがんでいったのは」と続けた。

 番組では同局に悪態をついているが、毎週話せる場があることに感謝もしているという。

 「もとから、ご飯食べさせてもらえるようになったら、ラジオやりたいという気持ちはずっとあった。テレビよりラジオの方がホンマの話ができる。テレビは“貴族”で、がんじがらめになってたんで。ラジオ愛ですね。今やラジオですらないんですけどね」

 自嘲気味だが、四月から同局「ゴールデンラジオ!」(月−金曜午後1時)の木曜担当リポーターとして出演、ライブ「妬男(ねたみおとこ)」(29日)が東京・浜松町の文化放送ホールで開催が決まり、前売りは完売。過去の番組の有料配信も始まり、山田の腕を同局は認めてきたようだ。

 目標は地上波での復活。「ギャラが欲しいからじゃなく、お金になる番組でなければ、プロの仕事ではない」と力を込めた。

<ポッドキャスト> インターネット上から音声や動画データをダウンロードできるようにするサービス。「iTunes」などのソフトでダウンロードして、パソコンなどで楽しむ。iPodなどの携帯音楽プレーヤーに転送して聴くこともできる。

 

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