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2012-05-29 個人の反応が異なることはランダム化比較試験が実施できない理由には
■[医学]個人の反応が異なることはランダム化比較試験が実施できない理由にはならない

厚生労働省が統合医療について検討している。統合医療とは「近代西洋医学とそれ以外の伝統医学や相補・代替医療とを統合したもの」とのこと。いわゆる相補・代替医療の中にも特異的効果があるものも含まれているだろうから、その辺を評価してくれるといいなあと思っていた。
ちゃんと評価してれくれれば(コスト対効果の問題はあるにせよ)いいのだけど、ちょっぴり不安なことが。というのも、「必ずしもランダム化比較試験(RCT)をしなくてもいいじゃないか」という声が出てきたからだ。RCTというのは、治療の効果などを評価するときに、患者さん(被験者)をランダムに治療群と対照群に分けて比較すること。ランダムに分けることで様々な偏り(バイアス)を少なくすることができる。コストはかかるけど質の良い研究だと言える。
ところが、統合医療の評価についてRCT以外の方法を用いるよう提案されたとの報道があった。
■統合医療も「EBMで評価できる」 - 医療介護CBニュース - キャリアブレイン
現在、治療のエビデンスを証明する実験方法としては、より正確に治療効果を判別できる「ランダム化比較試験(RCT)」が主流となっているが、従来の近代西洋医学に漢方やはり・きゅう、サプリメント療法などを取り入れた統合医療は、RCTで評価しづらいとされている。しかし福井氏は、「評価方法は、RCTでなければだめというわけではない」と指摘。被験者集団の健康状態を一定期間追跡する「コホート研究」などを例に、RCT以外の方法を用いるよう提案した。
「評価方法は、RCTでなければだめというわけではない」というのは確かにその通り。レベルは落ちるが、非ランダム化試験もエビデンスとして扱われる。例えば、「お金がないからまずはコホート研究を行って、見込みのありそうなものを絞り込んでからRCTをしましょう」という主張だったらよく理解できる。しかし、「RCTで評価しづらいとされているから」というのは、よく意味がわからない*1。厚生労働省のサイトになら詳しい理由が書いてあると思って探してみた。
■「統合医療」のあり方に関する検討会審議会資料|厚生労働省の資料4
「統合医療」の評価基準の策定は非常に困難とされている。個人の反応が異なることからランダム化比較試験(RCT:RandomizedControlledTrial)が実施できない分野が多くある。
「個人の反応が異なることからRCTが実施できない」という主張は誤りである。個人の反応が異なる治療でいくらでもRCTが実施されている。このような主張はRCTが必要である理由を理解していないからなされたとしか思えない。個人の反応が異なるからRCTが実施できないどころか、個人の反応が異なるからこそRCTが必要なのだ。個人の反応が同じならそもそも比較試験なんて必要ないじゃん。「治療を受けた人は全員効果がありました」で終わり。同じ治療を受けても効果のある人もいるし効果の乏しい人もいる。個人の反応が異なるのは当たり前。だからこそ、対照群と治療群とを比較する必要があるのだ。
「統合医療や代替医療は個別化治療だからRCT困難」という意見はよくある。ホメオパスの意見を引用することもできるが、ここではあえて「厚生労働科学研究費補助金(臨床応用基盤 研究事業)研究 主観的個別化患者情報のデータマイニングによる漢方・鍼灸の新規エビデンスの創出」*2から引用しよう。
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伝統医学は個別化治療であり、研究デザインが組みにくい
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伝統医療がRCTに向かない理由の一つとして、個別化治療である(同病異治・異病同治)ことが挙げられている。たとえば、風邪にある漢方薬の効果を評価したいとする。「風邪の患者の集団は均一ではなく、それぞれの証に合わせて異なる漢方薬が選択される。RCTを行っても治療群に証の合わない患者が多数混じるため有意差を検出しにくい」と言いたいのであろう。
だったら(たとえば)麻黄湯が効くと思われる証の患者のみ選んでからRCTを行えばいいと私には思えるのだがどうか。あるいは、風邪の患者をランダムに「伝統医学」群と通常治療群に分け、「伝統医学」群で思う存分個別化治療を行い、通常治療群と比較するという方法もあるだろう。ちなみに伝統医学に限らず、通常医療においても、風邪に対して一律に同じ処方するのではなく、症状に合った処方を行う。代替医療や伝統医学は個別化治療で標準医療はそうでない、という主張は誤解の産物だと私は考える。(■標準医療は画一的で、代替医療は個別的という誤解を参照)。
「統合医療は個別化治療だからRCTに向かない」とは言えない。実際に、漢方でも鍼でもホメオパシーでもRCTはなされている。個別化治療をRCT免除の言い訳にする主張には警戒が必要だ。効果がないか小さいがゆえにRCTで効果を検出できないだけなのに、個別化治療を免罪符としてごまかしているのかもしれない。
外部リンク
■統合医療とRCT - Interdisciplinary 「統合医療の評価にRCTが向かない理由」として「個別化治療である」ことだけでなく、「ホリスティックで文脈依存型である」ことが挙げられることもある。
関連記事
■「虚構体系」の効果 「ホリスティックで文脈依存型」の効果もRCTで検出可能だと私は考える。
*1:2012年6月4日追記:「統合医療はRCTで評価しづらいとされている」というのは福井氏の意見ではない。ublftboさんのコメント(2012/06/03 20:01)を参照
*2:URL:http://www.jmacct.med.or.jp/pediatric/iryo/pdf/16_20_watanabe.pdf
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試合で負けた後で、「このルールでは実力が判定できない」といって、ルールを変えようとしているようなもの。
初めに、効果の定義とその判定試験法を決めたら、あとで変えちゃダメですよね。
るーるを変えても
科学的に証明できれば何でも良いのですから。
一般的には最終的にRCTがこれにあたりますが、例えば漢方薬を考えたときに
日本で使えるものも100種類以上あると思いますが、ある漢方の、その対象を選別することはかなり難しい。この難しさが分かるかどうかですが。
だって、伝承医学ですから・・・
効果の評価基準や、層別化を行うための背景も分からないし、あっても複雑すぎるので
一般化して試験を組むのが難しい訳です。
適当に西洋医学的な評価項目で判断する方法もあるのでしょうが
これも最近では真に患者のためになっているか微妙な場合もあることは
普段から臨床試験に詳しい方なら分かります。
いずれにせよ試験を組むレベルまでまだ達していない訳です。
つまり標準治療のある場合は、医療の手段に入れちゃもともとだめな訳ですよ。
こんな背景の不確かな治療にランダム化される患者の身にもなってくださいな。
そんなことも分からないのが寂しい限りですが。
従って、従来のRCTでは十分な対応できないのが分かってますから
統合医療なんてものに全く魅力も糞もありませんので、
まず、絶対効果があると踏んだところで望む患者だけで
PIIしてくださいな。
ICでだまさないで欲しいのでPMDAにきちんと相談してプロトコールかいてくださいね。
のっけからRCTなんて無理なものは無理でしょう。
それで効果があれば、そこで効果がありそうな群を絞り込んで
次にRCTですが、絶対に必要なものではないので
勘違いしない方が良いですよ。
RCT絶対主義はこれからの個別化医療が進めば進む程無理なことは
知ってる人は知ってますから。
まあ、風邪なら試験できそうですけどね。
どういうことが「効果」なのかは、最初に決めるのが原則だと思います。何が「効果」なのかは、価値観の問題ですから、科学の範疇ではなく、社会的合意ということになろうかと思います。実際はもう少し複雑で、複数の「効果」のメニューを用意しておき、患者が選択するということになっています。患者が選んだ「効果」が最も期待出来る治療法は何かについては、科学的手法(RCT等)で判断することが出来ます。延命治療よりも、苦痛軽減治療を望むという類の選択です。
ある特定の治療法が「効果あり」と判断されるような「効果」を、後から探すのでは、「私が勝つルールにしろ」と同じで、「それは無いよ」とうのが私の書いたことです。
ただ、現実には目標とする「効果」を後から修正することは普通に行われており、それに社会的合意が得られるのであれば問題は無いと思います。その修正した「効果」も大抵は科学的手法で測定することは可能というのがNATROMさんの書いていることではないでしょうか。
上の「たまの通りすがり」さんが書いている「RCT絶対主義」というのが誰を指しているのかに興味があります。そういう志向を持つ人なり組織なりがあるのでしょうか。まさかNATROMさんの事では無いでしょう(NATROMさんがそんな意見を言っているのを見た事が無い)。
と言うか、「絶対主義」って相当強い表現ですよね。それ以外は認めない、のようなものですから。そこまで強い立場から意見を言っている人がいれば見てみたいものです。
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>NATROMさん
CBの記事について。RCTで無くてもコーホートなどで研究を行えば、というのが福井氏の意見で、記事ではあたかも、福井氏が統合医療支持の立場からRCTの方法的不備を認識している、かのように読めますが、第二回の議事録を読むと、全くそうでは無い事が解ります。ですので、こちらのエントリーの検討は、もちろん渥美氏や寺澤氏の言い分についてのものとしては妥当ですが、「福井氏の見解」へのもの、としては成り立たないと思いますので、それは補足しておいても良いかも知れません。
詳しくはこちらで書きました。
http://d.hatena.ne.jp/ublftbo/20120529/p1
鍼は統合医療の文脈で採り上げられる事もよくありますので、興味深いものがあります。
尤も、「絶対主義」などと言うのは当たりませんし、特異的効果の検討を追究していけばそういう方向に行くのはある意味で当然ですけれども。
これって、調理法も食べ方も分からず,摂取量も不明なので安全性の評価が出来ないというような状況でしょうか?だとすると,評価以前に,食べ方が分からないのだから食べられませんね。
「たまの通りすがり 」さんの主張がそういう意味だとしたら、統合医療に対してずいぶん厳しいですね。
でも、統合医療は暗黙知の職人技の部分が大きく,治療法の選択理由を明示的に説明することは出来ないとしても,選択はしているわけですよね。現実に治療しているのだから。ならば,RCTは可能ですね。