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 「上杉さん、信じましょう。本気で記者クラブのシステムを変えて民主主義を実現させるならば、そして絶対に途中で投げ出さないのならば、私が連帯保証人になります」

 その2ヵ月後、3.11が発生、筆者は東京電力本店の会見に通いだすことになる。そこで、再び日隅さんと遭遇することになったのだ。

 「そろそろ、始まりそうですよ」

 震災直後、自由報道協会代表として、政府や官邸との交渉や申し入れに忙殺されていた筆者の携帯電話を鳴らして、東電会見の開始を知らせてくれたのは日隅さんだった。

 最初、日隅さんに紹介された木野龍逸さんを加えた私たち3人は、不思議な連帯感に包まれていた。

 会見中、フリーランスには座る席が用意されていない。一方で大手メディアの記者たちには「別室」まで用意されている。だから、私たちはファックスの前の窮屈な席を3人で替わる替わる使うことになったのだ。

 3月中、日隅さんは弁護士業と両立させながら、筆者はラジオやテレビなどのメディア出演の合間にそれぞれ会見に通っていた。

 また、木野さんは、文字通り24時間体制での東電会見「監視役」となり、その後、日隅さんとともに政府・東電の欺瞞を暴く、なくてはならない存在となっていく。

 思い出すのは4月4日のことだ。その頃になると記者の数も多くなり、ギリギリにやってくる日隅さんの居場所はいつもドア近くのホワイトボード脇のスペース、そこに立ちながらの質問となっていた。

 「あなたたちを責めているんではないんですよ。ぼくだって権限のないあなたたちを責めたくはない。だけど、これはですね、主権者である国民の代わりに聞かなくてはならないことなんです」

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上杉 隆 [(株)NO BORDER代表取締役]

株式会社NO BORDER代表取締役。社団法人自由報道協会代表。元ジャーナリスト。1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。テレビ局記者、衆議院議員公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者、フリージャーナリストなどを経て現在に至る。著書に『石原慎太郎「5人の参謀」』 『田中真紀子の恩讐』 『議員秘書という仮面―彼らは何でも知っている』 『田中真紀子の正体』 『小泉の勝利 メディアの敗北』 『官邸崩壊 安倍政権迷走の一年』 『ジャーナリズム崩壊』 『宰相不在―崩壊する政治とメディアを読み解く』 『世襲議員のからくり』 『民主党政権は日本をどう変えるのか』 『政権交代の内幕』 『記者クラブ崩壊 新聞・テレビとの200日戦争』 『暴走検察』 『なぜツイッターでつぶやくと日本が変わるのか』 『上杉隆の40字で答えなさい~きわめて非教科書的な「政治と社会の教科書」~』 『結果を求めない生き方 上杉流脱力仕事術』 『小鳥と柴犬と小沢イチローと』 『永田町奇譚』(共著) 『ウィキリークス以後の日本 自由報道協会(仮)とメディア革命』 『この国の「問題点」続・上杉隆の40字で答えなさい』 『報道災害【原発編】 事実を伝えないメディアの大罪』(共著) 『放課後ゴルフ倶楽部』 『だからテレビに嫌われる』(堀江貴文との共著)  『有事対応コミュニケーション力』(共著) 『国家の恥 一億総洗脳化の真実』 『新聞・テレビはなぜ平気で「ウソ」をつくのか』 『大手メディアが隠す ニュースにならなかったあぶない真実』


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