2010年9月7日 藤原豊太郎
1.全体
・ 全国の外国人登録者は219万人で人口比1.7%、定住傾向にある。少子高齢化による労働力人口の
減少は外国人労働力の需要増を予測させる。
参考1:現在の労働力人口6,600万人が、2020年には500万~600万減少の予測。
参考2: 外国人登録 浦安 3,758人 2.3%
船橋 11,960人 2.0%
市川 13,477人 2.8%
・ 平成21年11月現在の国内の日本語教育機関、教師、学習者は次の通り。
機関、施設数 教師数 学習者数
大学、専門学校等 542 4,574 55,621
一般の施設、団体 1,113 24,616 115,237
合計
1,655 29,190 170,858
機関、施設数及び教師数はこの5年間ほぼ同水準だが、学習者数は5年前(128,500)に対し1.3倍と
なっている。教師数のうちボランティアは15,753人、54%である。
・ 日本語教師養成機関、教師数、受講者数はH21年度は全てが前年比減少している
H16年度 H17 H18 H19 H20 H21
機関、施設数 390 476 528 541 521 500
教師数 5,004 4,823 4,906 5,172 5,510 4,138
受講者数 40,729 37,965 37,628
38,200 40,586 33,608
・ 小、中、高学校における外国人児童数はH.20で約75,000人。内、日本語指導が必要な生徒は
約28,000人である。
日本語指導が必要な児童数の推移
H15年度 H16 H17 H18
H19 H20
小学校 12,523 13,307
14,281 15,946 18,142
19,504
中学校 5,317 5,097
5,076 5,246 5,978
7,576
高校他 1,202 1,274
1,335 1,222 1,291
1,495
合 計
19,042 19,678 20,692
22,413 25,411 28,575
2.特別講演:にしゃんた氏(羽衣国際大学准教授、スリランカ出身、日本国籍)
生活者としての外国人には3つの壁がある;
言葉の壁:日本語は難しい(電車が普通と思ったら不通だった。)
制度の壁:国籍条項で就職に苦労した。
心の壁:混血、ハーフ等の差別。
その壁を乗り越えて、明るく暮らし、優しい社会を作りたい。
3.事業報告
(1)
神奈川県営いちょう団地(横浜市、大和市)における日本語教育(多文化まちづくり工房)。
1980年よりベトナム難民、中国帰国者を受け入れており外国人は住民の約20%で、イベント等が
あると老人は日本人、若者は外国人の図式。いちょう小学校では65%が外国人で1年生ではそれが
80%に上る。自治会、大学、消防、警察、図書館との連携が必須。週2回、3ヶ月で全60回の
日本語教室を実施。進学希望者4人全員が定時制高校に進学した。
(2)
岐阜県可児市の日系人のための日本語支援者養成講座(NPO法人可児市国際交流協会)。
外国人登録1990年以降急増し、2008年は7,518人で人口の7.2%。工業団地、自動車、家電
工場で働くものが多い。ブラジル人が61%,フィリッピン人25%で、家族の呼び寄せ、国際結婚で
永住する住民も増えている。市の多文化共生センター「フレビア」の指定管理者になった事により
活動が活発化した。「介護ヘルパー2級資格取得講座」「フォークリフト運転技能研修」も行うが
日本語学習の時間を必ず入れている。「日系人のための日本語支援者養成講座」は土曜日の午前
2時間を使い、基礎コース、実践コース夫々12回を実施。学校での通訳サポーター、日本語教室
でのボランティア活動をしている受講者も多かった。
(3)
富山県「地域ボランティアブラッシュアップ講座」(有限会社トヤマ・ヤポニカ)。富山県の外国
人登録は人口比1.41%. 内訳は日系ブラジル人労働者、パキスタン人中古車販売業者、中国人、フィ
リピン人等の配偶者など。ヤポニカがボランティアの養成を行い地域の国際交流協会又は福祉協議
会と共に地域における日本語教室作りを行っている。20回60時間の講習実習を行い16名のボラン
ティアが受講。対話を楽しむボランティアに構造の意識化(=指導)を強要すると、対話での学習
者との良い関係が阻害され、ボランティアに大きな、負担と責任を負わせることになる。この時、
対話中心の活動ができる地域日本語教育専門家(ヤポニカ)が指導を担えばボランティアは対話に
集中して学習者との良好な関係が保てる、というヤポニカの考え。
4.「生活者としての外国人」に対する日本語教育の標準的なカリキュラム案について:
・ 外国人が地域社会で孤立することなく生活していくためには一定の日本語能力が不可欠。しかし
「生活者としての外国人」は仕事を持っており、日本語学習のためにまとまった時間を割くのは困難な
状況にある。各地域における多様な日本語教育の実践の指針となる標準的(最低限必要)な教育内容を
提示したのが-「生活者としての外国人」に対する日本語教育の標準的なカリキュラム案について-
(A4 126頁)である。来日間もない生活者としての外国人を主な対象としている。
・ 生活上必要な行為を以下8つに分類し(大分類)全30単位、60時間を標準学習時間としている。
(難民に対する日本語教育572時間、ドイツでの移民に対する言語教育450~700時間を考えると、
この60時間は、来日間もないとは言え、かなり日本語ができる外国人生活者が対象と言うことになる)
1.健康安全に暮らす 7単位
2.住居を確保維持する 2単位
3.消費活動を行う 4.5単位
4.目的地に移動する 3.5単位
5.人とかかわる 2.5単位
6.社会の一員となる 4.5単位
7.自身を豊かにする 2単位
8.情報を収集発信する 4単位
何故か別紙II 基礎資料p120の生活上の行為の分類一覧表では、「子育て・教育を行」うと「働く」が
追加されており大項目は8でなく、10となっている。
・ 大分類は更に中分類、小分類に別れ小分類には具体的会話例が載っている。小分類には能力記述
(can
do statement),場面状況、会話の実例、文法、語彙の説明がある。
・ 大分類は5.以降は抽象記述になっている。「人とかかわる」は「挨拶」なのだが、挨拶としたほうが
具体的で分かりやすい。具体記述に統一すべきではないか。分類番号の構成説明も無く、全体として
非常に理解しにくいカリキュラム構成と思う。
・ 「教室活動を行う際の参考資料」(p.113~p.118)は多くのネット上の参考サイトのURL(アドレス)が
記載されており参考になる。
以上
|