金融商品の基礎講座
第6回 有価証券(2) ゴルフ会員権
2008.10
1.有価証券の期末評価に関する税務上の取扱
(1)売買目的有価証券
税務上、売買目的有価証券の期末評価は、会計と同様に、時価法により評価した金額(時価評価金額)により行います(法人税法第61条の3第1項)。すなわち、期末時点の売買目的有価証券の評価益または評価損はその事業年度の益金または損金に算入されることとなります。
(2)満期保有目的の債券
法人税法上、売買目的有価証券以外の有価証券は、売買目的外有価証券として取り扱われますが、そのなかで償還期限及び償還金額の定めのある売買目的外有価証券については、償還有価証券として取り扱い、企業会計と同様に償却原価法の処理を行います。
ただし、税務で規定している償却原価法は定額法であり、金融商品会計では利息法を原則としているため取り扱いが異なります。
(3)その他有価証券
税務上は、有価証券を売買目的有価証券と売買目的外有価証券に区分し、さらに売買目的外有価証券のなかで償還有価証券以外は、原価法を適用する取り扱いとなっています。
したがって、会計上、その他有価証券が時価評価の適用対象となっているのに対して、税務上は原価法が適用される点が、大きな相違となります。
会計上、全部純資産直入法を採用している場合には、その他有価証券の評価損益が損益計算書上に計上されませんので、とくに申告調整の必要はありません。一方、部分純資産直入法を採用している場合には、その他有価証券の評価損が損金経理されますので、当該評価損は申告書別表四および別表五(一)で加算・留保の記載を行うことにより、申告調整を行うことになります。
(4)減損処理
法人税法上では、市場価格のある有価証券について、その価額が著しく下落している場合の評価損の規定を置いており、その場合の著しい下落の判断基準については、市場価格がそのときの帳簿価額のおおむね50%相当額を下回り、かつ、近い将来回復の見込みがない場合をいうものとしています(法人税基本通達9-1-7)。
一方、市場価格のない有価証券について、法人の資産状態が著しく悪化したため、実質価額が著しく低下した場合の評価損の規定を置いており、その場合の著しい下落の判断基準については、1株当たりの純資産額が取得時に比較しておおむね50%以上下落した場合をいうものとしています(法人税基本通達9-1-9(2))。
2.ゴルフ会員権
(1)金融商品会計基準による会計処理
金融商品会計基準では、ゴルフ会員権の会計処理は、以下のようになっています。
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(*1) |
「著しい時価の下落」・「実質価額が著しく低下した場合」の判断方法および時価の回復可能性の判断方法は「第5回、有価証券 2、決算時の会計処理 (2)有価証券の減損処理」を参照 |
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(2)税務上の取扱
1. |
株式形態の会員権 |
株式形態のゴルフ会員権は、税務上、相場の有無にかかわらず、非上場有価証券の取扱になり、法人税法施行令第68条第1項第2号ロ(上場有価証券等以外の有価証券の評価損の計上ができる場合)および法人税基本通達9-1-9(上場有価証券等以外の有価証券の発行法人の資産状態の判定)の適用を受けます。 |
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2. |
預託保証金方式の会員権 |
預託保証金方式のゴルフ会員権については、上記の株式形態の場合とは異なり、評価損の計上は税務上認められません。その一方で、ゴルフ会員権の預託保証金に対する貸倒れ処理ができるかどうかが問題となります。 |