現在位置:
  1. 朝日新聞デジタル
  2. ニュース
  3. 文化
  4. トピックス
  5. 記事
2012年6月15日10時25分

印刷印刷用画面を開く

mixiチェック

このエントリーをはてなブックマークに追加

老親扶養義務は時代遅れ?(1/2ページ)

写真:生活保護問題で会見する「次長課長」の河本準一さん=5月25日、東京都新宿区、山口明夏撮影拡大生活保護問題で会見する「次長課長」の河本準一さん=5月25日、東京都新宿区、山口明夏撮影

 お笑いコンビ「次長課長」の河本準一さんが、母親の生活保護受給をめぐって謝罪に追い込まれた。成人した子は年老いた親を扶養する義務がある、という民法の規定が批判の前提にある。義務の強化を求める声もあるが、前提自体を再考する余地はないだろうか。

■個人より社会で支える流れ 先進諸国は公的扶助

 ネット上で1本の声明文が静かな話題を呼んでいる。生活保護問題対策全国会議の「扶養義務と生活保護制度の関係の正しい理解と冷静な議論のために」だ。

 民法は、直系血族(親子など)と兄弟姉妹には互いに扶養する義務があり、夫婦は互いに扶助せねばならない、と記している。今回話題になっているのは直系血族、中でも「成人した子の老親に対する扶養義務」の問題である。

 声明文は先進諸国との比較を通して、「老親を扶養すること」まで定める日本の扶養義務範囲の“広さ”を訴えた。厚生労働省の資料をもとに、英国やスウェーデンなどでは原則、親が子(未成年)を扶養する義務や配偶者間の扶養義務はあるが、成人した子の老親に対する扶養義務はない、としている。

 同会議の代表幹事である尾藤広喜弁護士は、「家族による私的扶養から、社会による公的扶助へ。それが先進諸国での近代化の流れだ」と語る。「日本の制度もその方向へ向かってきた。老親扶養の義務が民法に書かれているのは、戦後の改正時にイエ制度から完全に脱却しきれなかった結果だ」

 民法や法社会学に詳しい利谷信義東京大名誉教授は、「国際的に見れば、家族の扶養義務を『夫婦間』と『未成年の子と親』に限定する方向へと進んできた」と語っている。

■小家族化・減りゆく家業継承 身内頼れぬ現代事情

 戦前日本の決まり文句は「人民相互の情誼(じょうぎ)」だったと、社会保障に詳しい小川政亮日本社会事業大名誉教授は話す。「貧困は親族と近隣で助け合え、国は関知しない、との発想だ」

前ページ

  1. 1
  2. 2

次ページ

PR情報
検索フォーム

おすすめリンク

老後の資産は自分でつくる!資産運用にまつわる誤解、鉄則を伝授。

日本に174万人いる「億万長者」。彼らは、どのようにお金を運用しているのだろうか。

シングル女性3人に1人が「貧困層」。富裕女子との差はいったい、何なのか。

夫婦にとって試練の時。良好な夫婦関係を保つにはどうしたらよい?

給与明細には家計を守るヒントが満載。読み解き方や対処法を紹介。

大人の都合と貧困に翻弄され、あまりにも無力な子どもたちを追った。


朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内 事業・サービス紹介