課外授業で児童の質問に笑顔を見せる岸さん |
水質浄化に働く“EM菌”。酵母菌、糸状菌、光合成細菌など自然界に存在する有用微生物群(Effective Micro−organisms)の総称で、淀川や道頓堀をはじめ全国的にも太田川(広島)や阿瀬知川(三重)など菌を用いた河川浄化の事例が報告されている。
「EMボカシネットワーク大阪」代表の岸隆美さん(69)=東大阪市=は、EM菌にサトウキビから作った糖蜜とぬかを混ぜた通称“元気玉”を河川に投入し、啓発活動などを行っている。トイレに散布すれば汚れが分解され、生ごみは堆肥に変わる。そんな身近な効果をきっかけに、主婦の目線で取り組んできた。小中学校での環境教育にも一役買っており「みんなが力を出し合って川を守ろうという風潮になれば」と前を向く。
EM菌の存在を知ったのは、余命6カ月を告げられた義妹を看病していた20年ほど前だ。ブタの飲み水にEMを混ぜたところブタが元気になり、小屋の悪臭も消えたという話を耳にした。そして、療法の一つとしてその尿を飲んだがん患者が快方に向かったと聞いた。
以来、企業や大学教授の講演を訪ね歩き、情報を求めた。看病の傍らで素材を食事に混ぜ続けたところ、義妹の食欲が戻ったという出来事が今も心に残っている。
そして、活動を広げるべく1998年に団体を立ち上げた。
地元・東大阪市内の河川を皮切りに、2004年からは大阪市漁協と力を合わせて2年間で道頓堀に20万個の元気玉、淀川でも06年以降にEM菌とその活性液などを継続して散布している。当時の組合長は「川底のヘドロが砂に変わった」と感激し、川べりの店舗からは「窓を開けていても臭わなくなった」などの声が聞かれたそうだ。
淀川で採取されるブランド“鼈甲(べっこう)シジミ”がかつては百貨店でも販売され、散布後一時は漁獲量が例年の2・5倍に相当する100トンまで戻った。「淀川、大阪湾をきれいにしたい」という漁協の思い入れにも触発され「楽しみながらやってこれた」と十数年の活動を振り返る。
「地産地消を真剣に考え、市民や行政、企業をもっと巻き込まないと」と岸さん。「せめて一つでも気づいたことから変えてほしい。それが子どもの健康にもつながるのでは」と将来を思う。
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