大前研一ライブ/2008年11月16日号より
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経営コンサルタントの大前研一氏は、トヨタ自動車の奥田相談役による「スポンサー降りてやろうか発言」について、一週間のニュースを独自に解説する
大前研一ライブ
のなかでトヨタ、ソニー、パナソニック、ドコモが4大悪人としたうえで、自身がかつて経験したトヨタやドコモからの圧力について言及、トヨタの広報は奥田氏が言うまでもなくパーフェクトにやっている、と述べた。
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トヨタ相談役の奥田氏がマスコミ批判(各種報道より)
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政府の「厚生労働行政の在り方に関する懇談会」座長の奥田碩・トヨタ自動車相談役は12日、首相官邸で開かれた同懇談会の席上、テレビの年金報道などについて「厚労省たたきは異常な話。マスコミに報復してやろうか。スポンサーを降りるとか」などと発言した。
出席者によると、奥田氏は「新聞もそうだが、テレビの厚労省たたきは特に(異常)」と述べたという。
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これを受けてテレ朝がひより、もとから「体制護持」の読売が同意するかのようにこれを掲載している。
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民放連会長「テレビも節度が必要」、奥田氏の批判発言で
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日本民間放送連盟の広瀬道貞会長(テレビ朝日相談役)は20日の記者会見で、奥田碩・トヨタ自動車相談役がテレビ番組の厚生労働省批判に不快感を示して「スポンサーを降りてやろうか」と発言したことに関連して、「出演者の中に感情にだけ訴える過激な発言もある。テレビの影響力の大きさから言えばある種の節度が必要かなという気もした」と述べた。
(11月20日 読売新聞より)
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奥田発言について、大前研一氏は「大前研一ライブ」(11月16日号)のなかでこう発言した。
あまりにも自民党べったりで驚く。出版社によれば、トヨタ、ソニー、パナソニック、ドコモが4大悪人。ちょっとでも悪いことを書くとものすごいプレッシャーが広告のところにくる。
編集は、(スポンサーに)「じゃあ大前さんと会ってください」という。トヨタのレクサスについてうまくいかないよ、と書いたときに「必要だったら会いますよ」と言って、最後、向こうから来て、話し合いをしました。
ドコモなんかに対しては、怯えきっている。私は昔の日本の不況のとき、ケータイにカネがいっちゃうから「これをドコモ不況という」と書いた。そうしたら編集者がひきつっちゃった。ページの反対側がドコモだったから。で、一週間延ばして、「ドコモ不況」ではなくて「ケータイ不況」のタイトルになった。
トヨタは奥田さんが言わなくても、奥田さんとこの広報部長はそれをちゃんとやってくれてますから。奥田さんが言うだけ損なんです。あの会社は、そのへんをパーフェクトにやってますから。「奥田さん、いじめないでくださいよ。みんな分かってますから、おたくの広報がパーフェクトなことやってるのは」。こういうふうに言ってあげたいね。
◇まったく同感
トヨタをはじめとする大企業のマスコミへの圧力は、私も常に感じている。単行本『トヨタの闇』の出版に際しては、大手出版社がすべてトヨタの前に降参。
なんと広告の掲載まで拒否されるという徹底ぶりで、まさにトヨタ広報部の「パーフェクト」ぶりを実感したものである。下記を参照されたい。
■リコール王・トヨタ “口止め料”日本一の威力
■トヨタ過労死事件 CNNほか海外メディアが注目も在京民放は無視
■『トヨタの闇』、日経が書籍広告の掲載を拒否
なお、『トヨタの闇』について、唯一、週刊誌上で紹介した人物がいた。ジャーナリストの田原総一朗氏である。
田原氏から、「トヨタの本、面白かったから、週刊朝日に書いておきましたから」と言われた(朝生で)。
渡邉「ぜんぜん、気づきませんでした。予想どおり、マスコミはまったく書評を書かないんですよ」
「だから!僕が書いたんだ。こんど、送っときます!」と微笑みつつ語気を強める田原氏。
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『週刊朝日』2007年11月30日号、田原総一朗のギロン堂 |
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こういった、「マスコミがやらないから自分がやるのだ」という姿勢が、私と共通するところである。ジャーナリズムにタブーがあってはいけない。それは当然のことだが、影響力は大きいが商業主義の権化のようなテレビを主な舞台としつつ、それを貫くのは大変なことである。
コマーシャリズムとジャーナリズムを高度なレベルで両立できているのは、テレビ界では田原氏しか見当たらない。記事を読むと、まったくそのとおりだと思った(右記)。
