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 鋭い質問を繰り返しながらも、日隅さんは常に一般市民や社会的弱者に寄り添い、そしてまた質問を浴びせる「相手」に対しても優しさを忘れなかった。

 5月、その日隅さんが末期がんに冒され、余命6ヵ月だということを自由報道協会のメンバーで、会見に参加し始めたばかりの芸人おしどりマコさん(鳥取大学医学部中退)から聞かされたときは、私は言いようのない重荷を背負ったような軽いショックを受けた。

 というのも、筆者はすでに東電会見を離脱し、海産物を中心とする食品の放射能汚染の取材に移っていたのだが、日隅さんの脱落によって、またあのストレスフルで肉体的にもしんどい会見に戻らなくてはならなくなるのかと覚悟したからだ。

 ところが、その直後、信じがたい話が耳に入ってきたのだ。

 「日隅さん、病院を抜け出して東電会見に来ていますよ」

 木野さんやおしどりマコさんからそう聞いて、私はすぐに日隅さんに電話した。

 「ここで止めるわけにはいかないんです。ここで止めたら死ぬほど後悔する。いや死んで化けて出るから後悔はしませんが。気にかけてもらってすみません。でも会見には出ます。上杉さんは気にせず、ご自分のやるべきことを続けてください」

 実際、治療や療養の合間に日隅さんは日比谷の東電本店にやってきて、時に苦しそうに肩で息をしながら、文字通り命がけの質問を繰り出す。こうして、壮絶な「闘い」が始まったのだ。

 12月、日隅さんの体調はすぐれず、東電会見にもあまり出てこないで、たまに出てきても苦しそうで、動けなくなることもあると教えられた。

 直後、岩上安身さんのIWJの1周年パーティで日隅さんと話した私は、一つの「お願い」をすることを決意した。

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上杉 隆 [(株)NO BORDER代表取締役]

株式会社NO BORDER代表取締役。社団法人自由報道協会代表。元ジャーナリスト。1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。テレビ局記者、衆議院議員公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者、フリージャーナリストなどを経て現在に至る。著書に『石原慎太郎「5人の参謀」』 『田中真紀子の恩讐』 『議員秘書という仮面―彼らは何でも知っている』 『田中真紀子の正体』 『小泉の勝利 メディアの敗北』 『官邸崩壊 安倍政権迷走の一年』 『ジャーナリズム崩壊』 『宰相不在―崩壊する政治とメディアを読み解く』 『世襲議員のからくり』 『民主党政権は日本をどう変えるのか』 『政権交代の内幕』 『記者クラブ崩壊 新聞・テレビとの200日戦争』 『暴走検察』 『なぜツイッターでつぶやくと日本が変わるのか』 『上杉隆の40字で答えなさい~きわめて非教科書的な「政治と社会の教科書」~』 『結果を求めない生き方 上杉流脱力仕事術』 『小鳥と柴犬と小沢イチローと』 『永田町奇譚』(共著) 『ウィキリークス以後の日本 自由報道協会(仮)とメディア革命』 『この国の「問題点」続・上杉隆の40字で答えなさい』 『報道災害【原発編】 事実を伝えないメディアの大罪』(共著) 『放課後ゴルフ倶楽部』 『だからテレビに嫌われる』(堀江貴文との共著)  『有事対応コミュニケーション力』(共著) 『国家の恥 一億総洗脳化の真実』 『新聞・テレビはなぜ平気で「ウソ」をつくのか』 『大手メディアが隠す ニュースにならなかったあぶない真実』


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