在日外国人の教育を受ける権利をテーマにしたシンポジウムと映画の集い(主催=枝川朝鮮学校支援都民基金)が10日、東京朝鮮第2初級学校で行われ、日本市民と同胞ら約90人が参加した。集いでは、朝鮮学校に対する「高校無償化」適用除外や公的助成の停止は国際人権法に違反するものであり、日本政府は国際人権基準に従い、朝鮮学校を含む外国人学校の教育を速やかに保障すべきだと指摘された。
民族教育の権利をテーマにしたシンポジウムの様子
「高校無償化」問題では、昨年8月に朝鮮高級学校への制度適用に関する審査が再開されたが、いまだ結論は先送りされている。3月には制度から除外された2期目の卒業生が生まれた。一方、この間に申請した別の外国人学校2校はすぐに審査され、適用が決まった。
補助金問題では、大阪、東京など各地で朝鮮学校への補助金が不当に停止・削減された。東日本大震災で日本学校と同じく被災しながらも避難所として機能した東北朝鮮初中級学校や茨城朝鮮初中高級学校に対する補助金(宮城県と水戸市)も今年度から打ち切られた。
これらの問題をテーマにした今回のシンポジウムでは、大阪女学院大学教員の元百合子さんと枝川朝鮮学校裁判弁護団の師岡康子さんが発言した。
シンポジウムの発言者たち
元さんは、国際人権法において、外国人学校が実施する母語教育、民族教育は無差別平等に保障されるべき普遍的人権としての「教育への権利」の構成要素であると同時に、民族的・宗教的・言語的マイノリティに属する人々が持つ「特別な権利」であると指摘。日本政府は自らが批准する国際人権諸条約・規約に則り、外国人学校を法制度的にも財政的にも補助し、民族教育の権利を保障しなければならないと訴えた。とくに、「無償化」や補助金の問題を政治的な問題を理由に恣意的に扱う政府や一部政治家の傲慢なやり方を「国際人権法に対する挑戦だ」と非難し、一刻も早い是正を求めた。
師岡さんは、朝鮮学校を含む外国人学校における民族教育の権利を保障し法制度上の差別をなくすよう、国際人権機関に再三勧告を受けながらも、朝鮮学校などを「各種学校」として認可し地方自治体が補助金を支給しているとして責任を巧妙に回避してきた日本政府の対応を厳しく非難した。その上で、「無償化」や補助金の問題に見るように外国人学校に対する教育の権利保障が後退し時代に逆行している今、もはや日本政府は言い逃れできないと指摘。「正義は私たちの側にある。権利拡充のためにもう一押したたかおう」と呼びかけた。
シンポジウムに続き、ブラジル人学校を舞台にしたドキュメンタリー映画「iエスコーラ!」と、東日本大震災直後の東北朝鮮初中級学校の様子を収録した記録映画が上映された。
集いを主催した日本の市民団体「枝川朝鮮学校支援都民基金」の関係者たちは、民族差別と排外主義が蔓延し民族教育に関する権利状況が著しく後退した日本社会の現状に警鐘を鳴らす有意義な集いが、在日朝鮮人と日本市民、北南朝鮮の支援で守られ築かれた東京第2初級で開かれた意義を強調した。
同校の李花淑校長は、「都民基金」の関係者たちが同校児童らに、「この学校は在日朝鮮人の宝であると同時に、日本社会の宝だ。君たちは日朝のかけ橋になる存在だ」と語りかけたことが児童や教職員たちの胸にしっかり刻まれているとしながら、これからも民族教育をしっかり守るとともに、朝・日平壌宣言10周年を迎える今年、朝・日友好に積極的に取り組みたいと語った。
「枝川都民基金」第8回総会の様子
この日、「枝川都民基金」の第8回総会が開かれた。2011年度の活動報告、同校で行われている「ミレ・枝川朝鮮語講座」の活動報告、2012年度の活動計画、役員選任などが滞りなく行われた。
土地問題をめぐる裁判に巻き込まれた同校を支援するために発足した「枝川都民基金」は、裁判終結後も活動を続けており、これまにでスクールバス、折りたたみ式のアルミ舞台、来客用の椅子、遊具などを同校に寄贈したほか、新校舎建設でも多大な寄付を集めた。
今年度は、体育器具の寄贈を目標に幅広く寄付を募っていく。また、朝鮮学校に対する地方自治体の補助金削減に反対する取り組みも行うという。(泰)