在留邦人向け安全の手引き 在スウェーデン日本国大使館

在外公館がまとめた安全の手引きです。海外の在留邦人が、事件や事故に巻き込まれないために留意すべき事項の他、(必要に応じて)戦争、暴動等の緊急事態への備えと緊急時の対処方法が記載されています。


安全の手引き

平成22年4月1日
在スウェーデン日本国大使館

目次

  1. はじめに
  2. 防犯の手引き
    1. 治安情勢
    2. 日本人の被害例とその対策
    3. その他注意を要する犯罪
    4. 特に注意を要する場所
    5. 交通事情と事故対策
    6. 緊急連絡先
  3. 緊急事態対処マニュアル
  4. おわりに

I.はじめに

スウェーデンでは現在犯罪数は増加傾向にあります。かつてヨーロッパの他の国に比べ治安は比較的良好とされ、日本人が対象となった凶悪犯罪はほとんどありませんでしたが、過信は禁物です。
この手引きはスウェーデンに滞在されている皆様が、安全に、楽しく生活できまするようにとの願いを込めて執筆しました。ご参考にしていただければ幸いです。

II.防犯の手引き

1.治安情勢
 

スウェーデンの2009年の統計によれば、犯罪として認知された記録だけでも、約131万件の犯罪が報告されています。統計のとり方は国ごとに相違があり、単純比較はできないものの、人口比約13倍の日本の犯罪件数(刑法犯)が、約170万件(2009年)ですから、スウェーデンの犯罪発生率は日本の7倍以上に及ぶことになります。スウェーデンにおける犯罪の過半数を窃盗等の財産犯が占めていますが、近年暴力犯罪の増加も目立ってきています。
平成21年中にパスポートの盗難や紛失で43名の日本人の方が当館を訪れました。一見少ない数字ですが、大使館に報告のないパスポート以外の金銭等の盗難件数は、かなりの数に上ると見られます。
ストックホルム警察によると、各国からの旅行者のうちでも日本人が頻繁に被害に遭っているとのことです。多くの日本人の鞄には、多額の現金やPCなどの高価な電子機器が入っていると思われているのも理由の一つのようです。

2009年の主要な犯罪件数(届出件数)
○生命・身体への犯罪  ・・・  約  90,810件
○性犯罪  ・・・  約  15,528件
○車の窃盗  ・・・  約  40,364件
○不法侵入  ・・・  約  95,457件
○強盗  ・・・  約  9,574件

2.日本人の被害例とその対策
(1) 置き引き
被害例1
ある有名ホテルでのビュッフェスタイルの朝食時、グループで旅行に来ていたAさんは、友人3人と楽しく朝食をとっていました。友人が同じテーブルに座っていたので、安心して椅子の下に自分のバッグを置いて食べものを取りに行き、戻ってみるとバッグは無くなっていました。すぐ側に座っていた友人もバッグを盗られたことには全く気づいていませんでした。
貴重品は体から離さない。
テーブル、椅子又は床にバッグを置いたまま食事をとりに行かない。
有名ホテルだからといって安心しない。

被害例2
休暇シーズンで混雑しているアーランダ空港において、出張で海外に出かけるために搭乗手続きを待っていたBさんは、あまりの混雑のため出発に遅れてしまいました。そこで、バッグを足下に置いて電話で相手方にその事情を説明していました。電話が終わって気がつくと、もうそこにはバッグはありませんでした。
休暇シーズンで混雑が予想される場合は、十分な余裕をもって空港等に到着するよう心がける。
電話等で荷物を床に置く場合は、しっかりと荷物を足で挟む等の処置をする。(ホテルでのチェックイン・アウト時も同様です。)

被害例3
フェリーで、ヘルシンキからストックホルムに移動をしようとしていたCさんは、眺めのよいデッキに座席が残っているのを見つけ、席を確保しようとして椅子の上にバッグを置いて友人を呼びに行きました。そして友人を連れて戻ってみるとバッグは無くなっていました。
日本と違い、席に荷物を置いてその場からいなくなると、かなりの確率で荷物を盗られます。列車内でも同様です。

(2) 液体物かけ泥棒
被害例4
アーランダ空港から列車でストックホルム中央駅に到着したDさんは重いスーツケースを引いて駅構内を歩いていました。すると男が近寄ってきて、背中に何か液体が付いていると注意してくれました。「ご親切にありがとうございます」とDさんはお礼を言って、上着を脱いで拭きました。拭き終わって気が付いてみるとDさんのバッグは無くなり、男も消えていました。
窃盗被害の大部分がストックホルム中央駅構内や地下鉄Tセントラーレンへの乗換通路においてこのような方法で発生しています。マヨネーズ、ケチャップ、アイスクリームなどをつけられる場合が典型的で、上着だけでなくリュックサックやバッグにかけられるケースもあります。このような時はあわてずに、荷物に注意し、周囲に気を配りながら落ち着いて拭く等の処置をしてください。

(3) スリ
被害例5
ガムラ・スタンでショッピングをしようとして、Eさんは友人とあるお土産屋さんに入りました。混雑しているお店の中で品物を見ていると、後ろから男が同じ商品を見るような素振りで側に来ていました。お土産を選び終わり、ハンドバッグからお財布を出そうとしたところ、閉まっていたはずのハンドバッグの口は既に開いていて、中のお財布とパスポートがなくなっていました。
スリはガムラ・スタン地区やドロットニングガータン、ストックホルム中央駅など混雑する地域で発生しています。時々振り返るだけでも予防効果があります。
後ろから抜き取られやすいところに貴重品を入れない。

(4) 強盗
被害例6
宿泊中のホテルの部屋で、ノックに応じてドアを開けたところ、いきなり顔面を殴られ、意識が朦朧としているうちに現金等を強奪されました。
ホテル滞在中の身に覚えのない訪問は無視する。
エレベータ等で乗り合わせた人が同じフロアーで降りた場合、用心した方がよいでしょう。
有名ホテルだからといって安心しない。

(5) 話しかけ泥棒
被害例7
中央駅で、Fさんは友人がトイレに行ったので、友人と自分の荷物を監視していました。そこへ男がなにやら訳の解らない言葉で熱心に話しかけてきたため、Fさんはそちらに気をとられました。男が去った後荷物を確認したところ、友人の最も大切なバッグがひとつなくなっていました。
見知らぬ人から話しかけられても決して注意を怠らない。通常、一人が話しかけている隙に他の仲間が盗んでいきます。

(6) ニセ警官
被害例 8
ガムラ・スタンを歩いていると旅行者風の男が近づいてきて、写真を撮ってくれないかといってカメラを渡してきました。写真を撮った後、カメラを返そうとしても受け取ろうとせず、話し込み始めました。そうしているうちに警官(私服)と称する二人組が現れ、「そこで何をやっている。麻薬の取り引きか?」などと尋問を始めました。麻薬を財布に隠していないか確認するので見せて欲しいとの要求に応じ提出したところ、そのまま財布を持って逃げられました。
路上で警察の尋問を受けることは通常ありませんし、まして財布の中を見せろということなどあり得ませんので、まず疑ってかかった方が無難です。
もし疑わしい者に遭遇した場合、警官にID提示を求めるなどして対処してください。絶対に財布や荷物等を渡すことなく、頑なな態度で応じてください。
警官の服装をしている場合もありますのでご注意ください。

(7) 車上荒らし
被害例9
友人宅を訪問していたGさんは、車を20m程離れた路上に駐車し、庭で立ち話をしていました。すると突然ものすごい音がして、直後に車の警報装置が鳴り始めました。驚いて走っていくと車の窓ガラスが割られ、中においてあったGさんのバッグはなくなっていました。
車から離れるときは、バッグ等を外から目に付くところに置かない。
短時間の駐車でもロックを忘れない。
カーナビやiPod等、高価な電子機器は車を離れるたびに取り外す。

(8) 侵入盗(空き巣)
被害例10
Hさんが、イースター休暇の旅行から家に帰ると何故か玄関の内側から鎖の鍵がかかっていました。不審に思い裏口から中に入ると、既に空き巣に入られた後でした。
基本的に留守であることがわからないようにする。
・タイマー付照明装置の利用
・郵便物がたまらないよう、大家や隣近所の人に定期的に回収してもらう。
アラームの取り付け(警備会社との契約)

(9) 詐欺
被害例11
旅行中のIさんが、ヨーテボリ駅で電車を待っていたら男性に声をかけられ、お金を盗まれたので貸してほしいと話しかけられました。その男性は自称医者で、これから大事な学会があるのでどうしても行く必要がある、と話し、Iさんは二回に分けてATMから現金約30万円を引き出しその男性に貸しました。男性は自分の氏名・年齢・住所等を書いた紙を渡しましたが、後日それらが全て嘘だとわかり、お金を持ち逃げされました。
見知らぬ人物に多額の大金を貸さないようにしましょう。
同様の手口での詐欺がヨーロッパで多発しています。医者や教授といった地位のある職業を出されても、簡単に信じてはいけません。

3.その他注意を要する犯罪
(1) 性犯罪
強姦件数は年々増加傾向にあり、毎年、過去最高を更新しています。日本人が被害にあった例もあり、女性の深夜の外出、帰宅の際には出来るだけ交通量の多い明るい道路を選択し、暗がりでの一人歩きは極力避けるようにしてください。強姦以外にも強盗やひったくりの危険性もあります。

(2) 買春罪
1999年1月に成立した買春禁止条例により、買春側の罪が問われるようになりました。スウェーデンでは買春、児童ポルノ等については、大変厳しく取り締まられています。

(3) 飲酒運転
2008年の飲酒運転の件数(届出件数)は12,802件と、決して少ない数ではありません。ライトビール1杯程度なら問題ないと言われておりますが、これには全く根拠がありません。なお、飲酒運転となる血中アルコール濃度の基準は日本より厳しく、呼気1リットルにつき0.1mg以上となっております。くれぐれもご注意ください。


4.特に注意を要する場所

空港や駅の構内、ホテル等旅行者の集まる場所での被害事例が多発しています。



5.交通事情と事故対策
(1) 全般的にスウェーデンの運転者のマナーは比較的良好です。

(2) 鹿やエルクの飛び出しによる事故が多いので気をつけましょう。鹿をはねても罪にはなりませんが、警察へ報告する必要がありますので警察官の指示に従ってください。

(3) 学校の近辺は30km/hに制限されており、厳しく取り締まられています。標識をよく見て安全運転に心がけてください。

(4) 事故にあった場合、あわてず、警察に連絡しましょう。


6.緊急連絡先
(1) 警察・消防・救急車:112

(2) 大使館:08-579 353 00 (閉館時間、休館日には留守番電話となっておりますが、緊急の際にはメッセージの内容に従って連絡してください。)


III.緊急事態対処マニュアル

1.平素の準備と心構え
(1) 在留届の連絡先又は緊急連絡先に変更が生じた場合は、速やかに大使館までご連絡ください。

(2) 近隣のシェルターの位置をコミューンに問い合わせて、ご確認ください。

(3) 反捕鯨等日本に対するデモも発生していますので、テレビや新聞等から日常的に情報収集を行ってください。

(4) 警報サイレンの種類について確認しておきましょう。

スウェーデンでは、下記の通りの警報システムにより緊急事態の発生を国民に通報する体制をとっているので、それぞれ決められた行動を迅速にお取りください。また、これら警報体制訓練を3、6、9、12月の第一月曜日午後3時に注意喚起のため実施しています。
日本人にとっては、馴染みのないことですが、念の為以下 ○;1~○;4 の通りご案内します。

○;1 全般的緊急情報(現在でも訓練として、年4回行われている。)平時、有事を問わず次のような緊急警報が発せられます。
★警告音
≦≦サイレン 7秒≧≧   休止 (14秒)
≦≦サイレン 7秒≧≧   休止 (14秒)
≦≦......2分間続く
★対処振り
屋内に避難し、窓・ドア等を閉め、ベンチレーションを止める。
緊急情報があるのでラジオ、テレビ等よりの情報入手に努めてください。

○;2 戦争状態(現在では訓練として行われていない)

(イ)戦闘体制準備指示警報
★警報音
≦≦サイレン 30秒≧≧  休止 (15秒)
≦≦サイレン 30秒≧≧  休止 (15秒)
≦≦......5分間続く
★対処振り
ラジオを聞くこと。
近隣のシェルター位置を確認し、退避準備を整えること。
戦闘配置の任を受けている者は、即座に自分の部署に赴くこと。
警報が発せられたら、1時間は電話を使用してはならない。

(ロ)
★警報音
≦≦断続的に短い間隔のサイレン≧≧が1分間続く。
★対処振り
食料とトランジスタ・ラジオを持参し、シェルターに退避。

○;3 緊急事態解除通報 (現在では訓練として行われていない)
★通報音
≦≦サイレン 40秒≧≧
注:解除になった場合にも解除後1時間は電話を使用しないこと。

○;4 原子炉関係事故について
スウェーデン国境外600km以内の地域には、数十基の原子炉が所在していますが、旧東欧諸国には適切な安全防護装置を備えていない原子炉もあるため、仮に炉心溶融を伴う重大事故が発生した場合には、広範囲な地域が放射線汚染を受ける危険性があります。

放射能汚染の程度は、概ね次の3段階に分類されています。

*高レベル放射能汚染(第1日目の最大放射線量が1000mSV
《ミリ・シーベルト》以上)→激しい放射能宿酔と甲状腺の器官損傷が生じる。
*中レベル放射能汚染(第1日目の最大放射線量が10~1000mSV)
→長時間の疎開が必要。
*低レベル放射能汚染(第1日目の最大放射線量が10mSV以下)
→食料摂取等の規制が必要。

以上の通り汚染のレベルにより、汚染地域にさらされた地域の食物の摂取制限、外出時のレインコート着用、ヨウ素の服用等各種手段がありますが、事故が異なってくるため、詳しくは、上記(1)の全般的緊急警報時等の際、当局より出される指示に従ってください。

(5) 防犯グッズ(懐中電灯、ラジオ等)の準備をお勧めします。


2.緊急時の行動
(1) まず大使館にご一報ください。事件によっては、安否確認のためこちらからご連絡する場合もあります。

(2) 基本的に現地の当局等の指示に従い避難してください。また、避難先から大使館に安否についてご連絡いただければ、ご家族等にお伝えすることができます。

(3) 緊急事態発生の蓋然性が高まった場合、状況にもよりますが、基本的に在留日本人の方は外出を控え、短期滞在者の方はホテル等で待機し、次の行動に備えてください。

(4) 国外退避が必要であると判断される場合、とりあえず航空券の予約を入れることをお勧めします。一般の航空機等による退避が困難と予想されるときは、大使館が主体となりチャーター機等の契約について検討します。


3.緊急事態に備えてのチェックリスト
( i ) 非常用の水・食糧・医薬品・燃料等の準備(10日分以上が望ましい)
( ii ) シェルターの位置確認
( iii ) 緊急連絡先確認
( iv ) 現金・パスポートの準備
( v ) 航空券の手配又は仮予約


IV.おわりに

テロリズムは、今や世界中のどこでも起こりうるものです。また、航空機事故等の大規模事故は、国の安全性とは無関係に発生するものです。幸いなことにスウェーデンでこれらの事件・事故等は極めて稀ですが、これまでの安全は、これからの安全を保証するものではありません。万が一に備え、自分の身を自分で守るために、出来るだけの準備をしておくべきです。緊急事態が発生した場合、大使館はあらゆる手段を尽くして、日本人の生命や財産の保護に努める所存です。
また、日常生活における一般犯罪には十分にお気をつけください。ささいな事件でも大使館領事部にご連絡いただければ幸甚です。

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