
高橋浩二副局長
17日、都市環境ゼミナール(伊藤達雄会長)は公開学習会をアスト津で開催。阪神・淡路大震災の復興対策本部に当時の運輸省代表として参加した災害復旧復興のエキスパート、国交省中部整備局副局長・高橋浩二氏が『大震災から学ぶ教訓』と題して講演した。
高橋氏はまず、明治以降わが国で発生した大地震で当時の新聞やラジオに必ず『想定外』という言葉が出ている。災害の度に対策や制度の問題点が明らかになり、新たな災害対策を講じるという歴史の繰り返し。万全の体制を取っていても『想定外』が起こることを覚悟しなければならないと指摘。
しかし、東日本大震災でも過去の教訓を生かした橋脚補強により橋の被害は比較的軽微で済み、耐震強化岸壁を整備した港は生き残った。仙台空港の滑走路は液状化対策をしてあったのでガレキ撤去と排水で発災5日目で使えた。釜石港の湾口防波堤はチリ津波を教訓に整備し今回壊れてしまったが、検証の結果、この防波堤で津波到達が6分遅れ、津波高を4割減らし、津波の流速と遡上高を5割低減。約1300人の命を救うことができたことなど過去の対策が無駄ではなかったことを紹介。
三重県の課題については次のように語った。
「具体的に想定されている巨大地震は、東海・東南海・南海。発生確率は東海87%、東南海70%、南海60%、三連動地震の場合はM9・0だが、早く避難誘導計画を作る必要がある。例えば道路の上に逃げるとかも含めて。漂流物は仙台港はコンテナ4400本のうち1800本流れ出た。これをどう防ぐか。高知県須崎港では木材の固縛に加えJR須崎駅の前にフェンスを造り流木やコンテナが街の中に流れ込まないように防護している。
伊勢湾で地震・津波発災後に大型・小型の船などがどう漂流するかを示したシュミレーションでは、2日目には知多半島東側沿岸や伊勢湾の中央にあるが、3日目には伊良湖水道付近に結構流れ着いてきている。漂流物は火災を伴っている場合がある。船は航行できない。また漂流物はいつまでも浮いているわけではなく沈んだ時には航路を塞ぐ可能性があり、船舶航行に影響が長期間にわたる可能性がある。これにどう対応するかが課題になる。
もう一つの心配は、伊良湖水道は津波でかなり流速が早くなる可能性がある。伊良湖水道は狭く、船舶がここに流されて事故が起こらないように船は逃げなくてはいけない。
中電や東邦ガスのLNG船など危険物を積んだ船にいかに早く津波の情報を伝え安全な所に移動してもらうかも課題だ。
臨海工業地帯・四日市港の地震・津波対策では、ここは整備から既に40年以上経過した古い埋立地が結構あり、液状化の判定をして対策を取っていく必要がある。津・松阪港も同じような埋立地が結構ある。三重県が出した想定震度分布や液状化の危険度を示した地図では液状化は伊勢湾臨海部に集中している。防潮堤が津・松阪港のどこにあるかを示した図では、堤体がきちんとしておれば良いが壊れる可能性がある所もある。四日市港も同様で、危険をどう避けるかが課題。
復旧復興にはガレキ処分が決め手になる。三連動地震が発生した場合の三重県の想定災害廃棄物発生量は津波対策施設がない場合…約660万トン、対策施設がある場合…約550万トン。三重県で発生する一般廃棄物の約8~10年分相当になるとしている。事前に処分地を決めておくことが大事な備えになる。
地盤も沈下したり隆起したりする。三重県でのシミュレーションでは、津松阪港や四日市港周辺では60~70㎝ほど沈むという結果が出ている。こうしたものについては新たに中央防災会議から3月末から4月に詳細が出るので、それを見ながら今後の対策を練ることになる」。