「運なのか、チャンスで打席が回ってくる。そろそろ二軍かと思えば、巨人戦で内海(哲也)から2安打したり」
松本が思い出す高校時代の堂林は、いつも悔し涙に目を濡らしている。
「夏の県大会の直前、堂林が練習試合で一塁にヘッドスライディングしたんです。当時は投手なのに。そしたら案の定、膝をケガしてしまった。当然反省すべきシーンです。でも泣きながらベンチに引き上げる姿に、妙に惹かれてしまった」
松本に、選手を判断する基準を問うと、「あくまで8割は技術」と答える。その上で、
「今はみんな技術が高い。そのなかから、『これだ』という選手を見つけるには、やはり直感が必要なんです」
直感の裏付けになるのが、自らの現役時代の体験や記憶だ。
「亜細亜大野球部時代、1学年上に赤星(憲広)さん、2学年上に井端(弘和)さんがいました。赤星さんの練習量は凄まじかったし、井端さんはまさに天才だった。エラーは一度も見たことがないし、一度出塁してベンチに戻ってくると、相手捕手のサインを全部解読していたりするんですよ」
プロで通用する理由。堂林が練習試合で見せた悔し涙に、松本は先輩たちの姿を重ねていた。
「もちろん、堂林の場合も、一番は技術ですよ。右中間への強烈な打球に鳥肌が立ったんです。でも、あの涙は忘れられないですね」
努力の仕方を知っている
セ・リーグのサプライズが広島の躍進なら、開幕4連勝を果たしたロッテは、今季パ・リーグの台風の目になりそうだ。その開幕4試合すべてにリリーフ登板し失点0。早くも中継ぎのエースとなったのが、関西国際大からドラフト4位で入団した益田直也だ。
「大学のキャンプで初めて見た時からすごい球を投げていました。内角に回転数の高い球をバンバン放り込める。手元で伸びる。
でも彼が特別だったのは、勝負勘の鋭さですね」
ドラフトまで益田に張り付いていたロッテスカウト・下敷領悠太は言う。
「投球の間の作り方や、ピンチの時に球威を上げるメリハリのつけ方なんかは、簡単に身につけられるものではないんです」
そんなプロ顔負けの投球術を、益田はわずか4年で手に入れた。彼は高校卒業時まで内野手だったのだ。
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