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【放送芸能】

ラジオ新時代 ギャラクシー賞DJ賞 ニッポン放送吉田尚記アナ

 今年のギャラクシー賞で、DJパーソナリティ賞を贈られたニッポン放送の吉田尚記アナウンサー(36)は、インターネットで短文を発信するツイッターとラジオを組み合わせたことが、「次世代のしゃべり手」と評価された。ラジオという最古の電波メディアと、最新のソーシャルメディアは、なぜ相性がいいのか。(宮崎美紀子)

 今月四日、東京都内で行われた贈賞式。吉田アナはスマートフォン片手に登壇し、賞を受ける自分の姿を撮影してリスナーに晴れの瞬間を中継した。

 担当しているのは「ミュ〜コミ+プラス」(月−木曜深夜0時)。音楽、アニメなど、さまざまな若者文化を発信する深夜番組だ。

 昔からあるタイプの番組だが、吉田アナが放送二時間前からツイッターで情報発信を始めるのが特徴。リスナーとの「会話」が盛り上がったところで、番組が始まる。

 「ツイッター使ってラジオをやるって意味がわからない。何でそんなことやるのって、ずっと言われていました。ブログがはやり始めた時も、番組の企画書を書いたけど理解してもらえなかった。そこで学んだのは『わからないことにはノーと言うのが会社である』ということ。社の規程にツイッター禁止って書いてないから、始めてしまったんです」

 ネットを使って個人が情報を発信し、共有するツイッターなどをソーシャルメディアと呼ぶ。ハガキや電話で番組を作るラジオこそ「最古のソーシャルメディア」だと言う。違いは、ハガキやメールは放送局の担当者しか読めないが、ツイッターは誰でも読めること。放送局に都合のいい投稿だけ紹介することはできない。

 「東京、神奈川、千葉、埼玉の一都三県高校生クイズを番組でやってるんですが、ほかの県から『カヤの外かよ』って不満が来るわけですよ。昔は黙殺できたけど、僕らはゴメンって謝るし、さらに、ツイッターでリスナーが『関東の番組だからしょうがないよ』って代わりに説明してくれるんです。制作者とリスナーの距離が近いというよりも、もう共作です」

 吉田アナは、ソーシャルメディアを「本音を交換する場」と理解している。ラジオも昔から本音のメディア。小回りの良さも、瞬時に世の中の空気がわかるツイッター時代に向いていそうだ。

 「ソーシャルメディアによって、ラジオの価値は復活しています。テレビって世の中の意見を無視して作ることもできるけど、ラジオはそれを受け止めて、どう反応するかが腕の見せどころ。(思想家の)内田樹(たつる)さんも書いていますが、数千万人を対象にしたマスメディアの時代は終わり、次は二、三十万人のユーザーを抱えるミドルメディアの時代だと思うんです。それが人間にとって一番自然なメディアの規模では。ラジオもミドルメディアだから強い」

 ツイッターなどによって情報があふれ、うねりができる。パーソナリティーは全ての意見に向き合い、何となく番組の進む方向を示す−。吉田アナはラジオの在り方を、こう考えている。そして確信に満ちた語り口で言う。「ラジオは絶対に死にません。むしろ、生き残りやすくなってきました」

 ギャラクシー賞はNPO法人・放送批評懇談会の主催。一九六三年から毎年、優れた番組、個人を表彰している。ラジオ部門では、AM、FM、短波を通じて最も活躍したDJ、パーソナリティーにDJパーソナリティ賞を贈っている。

 ジョン・カビラ、小島慶子、伊集院光ら、看板番組を担当してきた、これまでの受賞者と比べると、知る人ぞ知る存在の吉田アナの受賞は異色。ラジオが変わりつつある象徴ともいえそうだ。

 よしだ・ひさのり 1975年、東京・銀座生まれ。慶応大卒。パソコン雑誌の編集者志望だったが、大学の掲示板で偶然、ニッポン放送のアナウンサー募集を知り、99年入社。アニメ、音楽、マンガからネットまでサブカルチャーに強いが、それが売りになることを知らず、自称「社内ニート」として社歴を積む。マンガ大賞の発起人、同社などが出資するスマートフォン向けアプリの会社「トーンコネクト」の代表も務めている。

 

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