栄光ゼミナール、経営権をめぐるドロドロ劇
2012.06.11
09年8月から9月にかけて、北山氏の救済を名目にTOBを実施。みずほ銀行へ担保に差し出されていた栄光株を買い取り、近藤陣営は自社保有に変えた。このため、北山氏名義の株式は17.21%からゼロになった。近藤氏側はしたたかだ。「北山氏が保有していた株式は自己株式として(ずっと)保有する」としていたが、09年12月にこの株を処分した。
北山氏が保有していた株の売却先は増進会出版社。増進会が15.90%を保有する第2位の大株主に突然、浮上した。増進会の社長の加藤文夫氏(64)は元商社マン。東大農学部を卒業して、商社のトーメンに入社。ニューヨーク、シドニーに8年駐在して食料・食品の輸出入を担当。98年に増進会に入社、05年から社長である。
このままでは、近藤氏に栄光を乗っ取られると思った北山氏は、反撃に出る。盟友の佐藤イサク氏へ残りの持ち株を売却した。佐藤氏は愛知などで「佐鳴予備校」を展開する、さなる(東京・新宿)の社長。10年9月、さなるは栄光の発行済み株式の32.80%を取得して、電撃的に筆頭株主に躍り出た。さなるは、北山氏の個人資産管理会社で筆頭株主だった信和管財(持ち株比率26.44%)を会社丸ごと買収したほか、同じ資産管理会社で第4位株主のエム・アイ・シー(同6.36%)から栄光株式を手に入れた。
近藤氏側は10年9月、増進会出版社に買収防衛策として第三者割り当て増資を実施。またまた、増進会が27.52%を保有する筆頭株主に躍り出る。買収を仕掛けたのが、さなるで、増進会は買収を阻止するホワイトナイト(白馬の騎士)という役回り。業界初の敵対的M&Aの幕開けである。
11年3月、さなるが保有していた栄光株式は、上場学習塾の進学会に売却された。進学会は北海道を代表する学習塾チェーンで、平井崇浩社長(35)は2代目。東大経済学部を卒業して、日本興業銀行に入行。05年、父親が創業した進学会に転じ、09年社長になった。11年6月末時点で、進学会は栄光株の7.14%を直接保有、信和管財が商号変更した有限会社進学会ホールディングスが22.75%を保有。合計で29.90%を所有して、増進会出版社の28.03%を抜いて筆頭株主になった。筆頭株主が頻繁に入れ替わったわけだ。
11年10月、栄光は栄光ホールディングスを設立して持ち株会社体制に移行。12年3月末時点の持ち株比率は進学会側が29.46%、増進会出版社が27.58%。合わせて57.04%を共同保有して、取締役4人を派遣することになったわけだ。