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2007年2月25日
No.672 「あべこべ内閣」
民主党は、今国会を「格差是正国会」と位置づけ、これまで自民党政権のもとで拡大した格差を是正し、国民の生活を向上させることをめざしています。これに対して安倍総理は、「格差を感じている人もいるだろう」という程度の認識であり、「経済が成長すれば格差は解決できる」と幻想をふりまいています。
しかし、安倍総理のいう「成長戦略」や「上げ潮路線」の中身は極めて曖昧です。成長率5〜6%を10年も続けることが可能ならば、取り残される人々はいなくなるかもしれません。が、1%程度の成長が精一杯という時代においては、格差問題を正確に把握し早急に対策を立てるべきです。
さて、小泉・安倍政権の6年間で年金課税の強化などにより国民の負担は、消費税率に換算すると3.5%に当たる9兆円も増えました。たとえば年収400万円の世帯では、すでに9万円近くも増税になっています。しかも、今年1月からは所得税、6月からは住民税の定率減税が完全に廃止されます。さらに、税金だけでなく、年金保険料と介護保険料も同様に引き上げられます。
このように国民の負担が一層増大する傾向にある中で、税制改正に関わる所得税法等改正案が提出されました。その内容は5千5百億円余りの企業優遇の減税を行うというものです。ここ数年、企業収益は上昇する一方、雇用者の報酬は総じて減少傾向にあります。にもかかわらず、家計の増税を先行させ、企業減税を実施するという発想が理解できません。格差是正に逆行するのではないでしょうか。まさに「あべこべ」内閣です。
企業減税の最大の目玉は減価償却制度の見直しです。企業の設備、建物は現行の95%から100%まで償却が認められることになります。しかし、一番恩恵を受けるのは、設備を多く持つ重厚長大の産業であり、成長分野のソフト産業や中小企業への恩恵は少ないとみられます。政策のスポットライトを当てるべき対象を見誤っているとしか言いようがありません。
日本経団連の御手洗会長は今年初め、法人税の実効税率を10%程度引き下げる一方で、財政再建のため消費税を2%程度引き上げることを提言しています。国民の負担で法人税の減税を賄うというシナリオです。この辺りの議論については、安倍総理も現時点では先送りの構えですが、参院選後には御手洗提言通りの動きをすることでしょう。
平成19年2月25日 野田よしひこ
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