永井聖一インタビュー
ポストロックをはじめとした多彩な音楽的バックグラウンドを、歌もののポップスに昇華させた集大成的作品『PURPLE』(08)、ソロ活動、ライブ作品『SCLL LIVE』(09)を経て、Spangle call Lilli line(以下、SCLL)が実に7年ぶりとなるニュー・シングル『dreamer』を発表した。これがバンドの新たな一歩にふさわしい、キラキラとした極上のポップ・ナンバーなのだ。本作のプロデュースを担当したのは、「相対性理論」のギタリストなどとして活躍する永井聖一。本作のプロデュースの話題はもちろん、彼の様々な活動に関するインタビューをお届けしよう。
(インタビュー・テキスト:金子厚武 写真:柏井万作)
1983年東京生まれ。「相対性理論」のギタリストの他、作曲、作詞、プロデュースワークなどを行う。
メンバー全員であれこれ言いながら作ってて。
―お一人で取材を受けられることってほとんどないですよね?
永井:今まではなかったですね。
―まったく?
永井:はい。
―では基本的なところも含めて色々聞かせてください。まずは今回SCLLをプロデュースすることになった経緯から。
永井:去年の6月ぐらいにSCLLから「相対性理論にプロデュースしてほしい」というお話をいただいたんです。だけど、メンバーの誰がやるのか? っていう部分が明確にはなっていなくて。うち(相対性理論)ってクレジットの表記が曖昧だったり、誤表記があったりしたので…
―相対性理論の楽曲の多くは真部さんの作詞作曲と記載されてますよね?
永井:あれも本当に大きな間違いで、実際はほとんどの作詞・作曲を4人全員で行っています。バンド然としてるって言うとおかしいけど、いいものを作る、対象をよくするためのプロセスが必要なので、メンバー全員であれこれ言いながら作ってて。クレジットには間違いが多いので、JASRAC含め、正しい情報への訂正を出しているところです。1枚目の『シフォン主義』とかはホントに遊びで作ったデモで、作詞作曲者などの表記も間違ったまま、それをそのまま流通させちゃったっていう…。こんなに話が大きくなると思ってなかったので。
―そうなんですね。じゃあ最初のオファーは永井さんを指名していたわけではなかったんですね。
永井:最初は漠然と「相対性理論にお願いしたい」って感じでした。でも(プロデュースは)グループでやることではないので、うちにはこんなメンバーがいて、こんなことができます、という話をみらいレコーズのスタッフを介して話してもらっていたら、ギター・アレンジもお願いしたいということだったので、求めていただいているものが僕のテリトリーに近いかな、と。
相対性理論っぽさを混ぜても面白くないから、新たに浮かんだアイデアを基にして、一人で練りながら作っていった。
―元々SCLLはお好きだったんですか?
永井:正直名前を知っているくらいだったんですけど、藤枝(憲:SCLLのギタリスト)さんから過去の音源を送ってもらって、これなら面白いことができるんじゃないかなって思いました。
Spangle call Lilli line
―じゃあ最初はまず会って話してみるところから始まったわけですか?
永井:いえ、実際に会って話したのはだいぶ後で、最初は大坪(加奈:SCLLのボーカリスト)さんのハミングが乗ったデモを送っていただいて、「これに歌詞をつけて、好きにやってください」っていう伝言だけだったんです。
―具体的に「こういうイメージで」みたいな指示もなく?
永井:「好き勝手やっちゃってください」って指示だけ(笑)。だから、いわゆる世間一般の認識でいう、相対性理論っぽさをそこに混ぜても面白くないから、そのデモを聴いて新たに浮かんだアイデアを基にして、一人で練りながら作っていった感じです。
―そもそもSCLLが相対性理論にプロデュースを依頼したポイントは何だったんでしょうね?
永井:あのシングルはとにかく「ポップなものにしたい」と言っていたので、うちに頼めば面白くなる、と思ったんじゃないですかね。