◇なでしこリーグ第9節 INAC神戸 1−0 日テレ
試合観戦に訪れていた、なでしこジャパンのDF熊谷(フランクフルト)に、そっと頭をなでられていた。試合後のロッカールーム前。今にも泣きだしそうな顔をしていたのは、FW岩渕だった。1月に疲労骨折の修復手術を受けた右足小指に痛みを覚え、前半で退いた。首位取りがかかる一戦で好機も逃していた。責任を感じたのだろう。「自分でやっちゃいました。手術したところ」。気丈に振る舞いながらも、言葉少なだった。
チームが主導権を握れない中、155センチの小柄なFWは自慢のドリブルで相手守備陣を何度も脅かした。前半30分、永里とのワンツーからゴール左を狙い澄ましてシュート。GK海堀が右手1本で防がなければ、間違いなくネットを揺らしていた。異変が起きたのは42分。ペナルティーエリア内で相手DF近賀を振り切り、右足でクロスボールを上げた直後、しばらく立ち上がれず、ハーフタイムに野田監督から「チームメートを信じよう」と交代を告げられた。同監督によると、患部にはボルトが入っているため、今も強い痛みを感じることがあるという。
なでしこジャパンの国内合宿は11日に始まり、国内組は12日に合流する。11カ月ぶりに代表復帰した岩渕は「(合宿は)大丈夫です」と、少し足を引きずりながら、競技場を去った。ショックを吹き飛ばしたかったのか、その声はひときわ大きかった。 (関陽一郎)
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