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2012年6月13日(水)付

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一体改革協議―増税先行批判は筋違い

社会保障と税の一体改革をめぐる修正協議が、大詰めを迎えている。国会に提出されている7法案について、歩み寄りの努力が重ねられていることは歓迎する。だ[記事全文]

被災地の子―大切なのはこれからだ

被災地の子どもたちに、いま私たちができることは何か。東日本大震災では約240人の子が両親を失い、1500人ほどが父または母を亡くした。ほかに、学費の援助が必要になった子[記事全文]

一体改革協議―増税先行批判は筋違い

 社会保障と税の一体改革をめぐる修正協議が、大詰めを迎えている。

 国会に提出されている7法案について、歩み寄りの努力が重ねられていることは歓迎する。

 だが、気になることがある。

 民主党が公約に掲げる新年金制度の創設と、後期高齢者医療制度の廃止に議員らの関心が集まり、協議の成否を左右しかねない点である。

 「撤回」を迫る自民・公明両党に、野田政権は歩み寄りを探る。これに対し、民主党内からは「撤回や棚上げには応じられない。それでは増税先行になる」という声が湧いている。

 しかし、増税先行という批判は、筋違いだ。

 あらためて一体改革の中身を確認しよう。

 第1の柱は消費増税だ。財源の多くを借金に頼る社会保障費を、できるだけいまの世代で負担し、子や孫の世代へのつけ回しを避けるためである。

 第2の柱は、社会保障の充実だ。増税分の一部を財源に子育て支援を拡充し、保育所の待機児童を減らす。非正社員も正社員と同じ年金や健康保険に入りやすくする、といった内容だ。

 こうした充実策は、よりよい方法を探りながら、必ず合意を見いだしてもらわなければならない。それなしの「増税先行」は、私たちも願い下げだ。

 一方、民主党が公約とする二つの政策は、そもそも一体改革とは別の問題だ。

 月に7万円以上の年金を受け取れるという新年金制度の実現には、今回とは別の、更なる増税が要る。再増税を説く覚悟なしに、公約だから守れというのでは無責任だ。

 しかも民主党は、政権交代から3年近くたっても法案をまとめることさえできない。

 それにしても、「別問題」の政策が焦点になるのはなぜか。

 多くの自民党議員は、こう考えている。

 民主党は政権交代前、だれでも7万円以上の年金を受け取れる新制度が、すぐにでもできるかのような宣伝ぶりだった。後期高齢者医療制度を「うば捨て山だ」と攻撃した。それで政権を奪ったのはけしからん――。

 恨みつらみがあるから「とにかく撤回せよ」となる。民主党議員は、撤回するとメンツ丸つぶれだから、譲るなという。

 そんな「遺恨試合」のような争いを演じている暇はない。

 公約関連の政策は切り離し、落ち着いて協議できる別の場を設けるしかあるまい。いまは実のある次世代支援の実現に、力を集中すべきである。

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被災地の子―大切なのはこれからだ

 被災地の子どもたちに、いま私たちができることは何か。

 東日本大震災では約240人の子が両親を失い、1500人ほどが父または母を亡くした。ほかに、学費の援助が必要になった子も7万人近くいる。

 両親をなくした子のほとんどは、親族や里親とともに暮らしている。養育費や学費については国の手当に加え、50種に及ぶ官民の奨学金もできた。

 あれほどの災害だったのに、多くの子に温かい家庭が見つかり、手厚い援助が用意された。東北の地域社会の強さ、日本社会の優しさを改めて感じる。

 しかし、心の問題に目を移すと、難しいのはこれからだ。

 阪神大震災では、心身が不安定になる子は1年目より2〜4年目の方が増えた。

 親が行方不明のままで、心の整理がつかない。夫をなくして泣き暮らす母を気づかい、自分の悲しみはしまい込む。そんな無理をしてきた子は、何年もたって症状が出ることがある。

 東北の被災地でも、今年になって不登校や非行が増えはじめたという報告がある。

 「お母さんを助けられなかったから反省してるの」と、部屋でひとり正座する。ボランティアの人たちも、そんな傷ついた子の姿を何人も見ている。

 子どもを見守り、話を聞く大人を増やさなくてはならない。

 たとえばスクールカウンセラーだ。被災3県はもともとカウンセラーが少ない。岩手県を例にとると、小中高620校に対し、約70人しかいない。

 国は昨年度、のべ2千人のカウンセラーを全国から交代で3県に派遣し、急場をしのいだ。

 ただ、子どもと関係を築くには時間がかかる。次々と人が入れかわるより、同じ人が同じ子と長く付き合う方がいい。

 初めは長くて3カ月だった派遣期間は半年に延ばされたが、現地からは「4、5年単位で考えてほしい」「常駐してほしい」との要望も上がる。

 なるべく長く派遣を続けて、その間に地元の教師らにノウハウを引き継いでほしい。

 子どもたちを5年、10年と息長く支えることは、地域に暮らす人たちにしかできない。地元の人材を育てる必要がある。

 「あしなが育英会」は、子どもと遊びながら話し相手にもなるボランティアを現地で育てている。子どもの支援に取り組むこうした団体の活動を支えることは、被災地の外に住む人たちにもできる。

 被災した子がみな成人するのは19年後の3月11日だ。その成長を長く見守り続けたい。

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