ノマド女王 安藤美冬氏 アムウェイ関与の噂 ソーシャルメディアとモラルハサード

切込隊長の 安藤美冬氏に関する記事が話題を呼んでいる。 【号外】安藤美冬女史@ノマド女王がマルチまがい商法のフロントだった件について

話題になるのも当然で、安藤美冬氏といえば情熱大陸に登場し一躍「ノマド」の代名詞となった時の人である。その安藤氏が「マルチ商法」に関与していたというのだから、Twitterでそもそも「ノマド」というキーワードは話題に取り上げられやすいこともあって、大きな反響を呼んでいる。

■ノマドに関するある噂
 5月22日「ノマドワーカーには自己啓発本を読んでいる“自称”起業家が多い?」という記事にこんな文章があった。

この男性が言うように、ノマドワーカーの中には「自己啓発本」や「ビジネス書」に耽溺している人も少なくない。さらに取材を進めると、彼らの多くが副業、もしくは本業で、マルチレベルマーケティング(マルチ商法)に従事していることも分かった。

「それを聞いて納得しました。ノマドワーカーの多くが『横のつながりでビジネスが生まれる』という趣旨のことを言いますが、これはマルチ商法の発想にリンクします。ノマドというスタイルそのものではなく、そこにハマる人たちのメンタリティが“マルチ的”とえるかもしれません」(前出・速水氏)

■人を媒介とするメディアの危険性
 ソーシャルメディアが日本に普及しだした2010年。ソーシャルメディアに対して盲目的に「性善説」が語られることが多かった。マスメディアは信用できない。人を媒介としたソーシャルメディアは信用出来る。何故なら「組織は嘘を付くけれど、個人は嘘をつかない」そんな論調がソーシャルメディアを称える言葉、既存メディアとの対立軸を描こうとする向きはあった。

 それから、多くの人が参加しだした2012年。本当に当時語られていたように、ソーシャルメディアは「安全」なメディアなのだろうか?

 ここ最近ソーシャルメディアで話題になった、Google+でNo.1フォロワー数を掲げた女性を利用した寄付金詐欺未遂事件。TwitterのKloutScoreや、Facebookのフィード購読ランキング上位者で、一般人と思われる人がランクインしている場合は、情報商材系の人物が多いという噂も前々から存在した。
 そして、真意の程はまだわからないが、今回のノマド女王に関する「噂」である。

 ソーシャルメディア上で信頼の象徴となるべき筈の、多くのフォロワーを持つ彼女達は、果たして信頼の足る「キュレータ」として貴方を価値ある情報へナビゲートしてくれる存在なのだろうか?

■そもそも、「マルチ商法」と相性の良いソーシャルメディア
 2月に発行した私のメルマガの一部を抜粋する。

 ■ソーシャルコマースの未来像はアムウェイ?
 6億円稼ぎ出すアムウェイの伝説の販売員 成功は盲信から
 日本でアムウェイと聞くと、友達関係をお金に変えるアコギなビジネスと捕らえられ、「私アムウェイやってるんだけど」と言おうものなら、嫌な顔をされるのが常識です。
 しかし、海外では事情が違う模様。そもそも日本は副業が認められていない特殊なお国柄ですが、海外では「副業可能」があたりまえ。そういった事情もあり、サイドビジネスとしてのアムウェイは非常に人気があるとのこと。
 
 そこで注目されているのがアムウェイのビジネスモデル。これからのSNSを活用したビジネスはコミュニティビジネスになると目されていますが、「口コミビジネスの本家アムウェイ」が、その成功モデルとして注目を集めているとのこと。
 
 ・口コミによる組織的販売
 ・勧誘した人にインセンティブ
 ・勧誘した人数によって、上位にたち、下位のメンバーの売り上げの一部を獲得
 
 といった、口コミによる宣伝手法と、モチベーションを高めるための手法が注目を集めているとのこと。
 
 コミュニティビジネスには宗教的なカラーも強いのですが、更に追い討ちをかけるように、アムウェイ的なビジネスモデルが確立されるとなると、ソーシャルビジネスの進む先は「絆をお金に変える」商法になっていきそうですね。業界の健全な発展を祈りたいです。

B to Bを行う企業にとってはソーシャルから得られる収益は少ない。かといってB to Cでも現在の国内の状況では大きな収益貢献は期待出来ない。数百人から数万人規模の繋がりをマネタイズする効率の良い手段 = マルチ商法 なのである。副業の禁止されていない海外では、ソーシャルメディアを活用したマルチ商法が水面下で力を持ち出している、国内でも一部の有識者の間でそう語られていた。

■広告媒体としての価値を問われるソーシャルメディア
 実の所、今回の記事は特定の個人を糾弾するためのものでも、マルチ商法を非難するものではない。ソーシャルメディア上で垣間見られる「モラルハザード」の実態について、広く知って貰いたいと思ったからだ。ソーシャルメディアというメディアはまだまだ若い。これから大きくメディアの在り方を変える可能性も、単なるブームとして消え去っていく可能性、どちらの可能性も秘めている。

 私自身はソーシャルメディアは人のコミュニケーションのインフラとして一過性のブームでは無く、文化として根付いていくと「思って」いた。しかし、昨今の現状を冷静に分析していると、流通する情報に偏りがあり、マスの情報をあえて無視した「自分達に都合の良い物をフォロワーに見せる」メディアに変化してきている傾向を感じていた。そして、今年に入ってからのソーシャルメディアを活用した詐欺まがいの事件の勃発と、今回の件である。

 ソーシャルメディアで発信力のある人々から出てくる、「危ない噂」。そういった人々を活用しないと情報が流通しないメディアに企業は利用価値を見出すだろうか?
 実際の所、多くの企業はソーシャルに公式アカウントは作成しているが、実際はコミュニケーションを取ることを望んでいないのが実情だ。このままモラルハザードが続くようであれば、広告媒体としての価値は無いと判断され、撤退を決める企業は多くなるだろう。

 ビジネースユース色が嫌われやすいソーシャルメディアではあるが、企業の参入が無ければ社会的インフラとはならず、一部の愛好家だけに愛されるメディアとなるだろう。

 2009年頃はソーシャルメディアを活用した純粋な出会いを誰もが楽しんだ。あの頃の「誰とでも会うのが楽しかった時代」を、もう一度思い返してみてはいかがだろうか。

プロフィール
大元隆志(おおもと たかし)
翔泳社EnteprizeZineITイニシアティブITmediaオルタナティブブログ等、様々なIT系メディアで活躍するITジャーナリスト。SNSビジネス特集でNHK教育テレビに出演。ソーシャルメディア系イベントしては国内最大級となるソーシャルカンファレンス主催者。著書に「ソーシャルメディア実践の書」、「IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入」がある。所有資格 米国PMI認定PMP、シニアモバイルコンサルタント等。


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