2012年 父の日記念 ヨシュエスLASハルキョン3点セット短編4
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英雄伝説 空の軌跡SS
ヨシュエスVer.サブタイトル『カシウスのお守り』
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※本作品は『零・碧の軌跡』と設定が異なります。
影の国の事件の後、エステルとヨシュアはレンを連れてロレントへ帰った。
宣言通り、エステルとヨシュアはレンをブライト家の家族として迎え入れる事にしたのだ。
ブライト家に着いたレンは屋根裏を自分の部屋として希望した。
屋根裏はベッドを置く広さはあるが、物を収納するスペースはそれほどない。
それでもレンは屋根裏で構わない、自分が大きくなった頃にはエステルとヨシュアが同じ部屋で寝るんだろうからと言ってエステルとヨシュアを赤面させた。
レンは結社の元執行者であり、本来なら星杯騎士団に命を狙われてもおかしくない立場だった。
しかし巨大人形型兵器を封印すると誓ったレンは、カシウスが保護者になる話によって見逃されたのだ。
そしてカシウスはレンに殺戮の象徴である鎌に代わる武器として、棒術を教えた。
今もカシウスはブライト家の庭でレンとエステル相手に棒術の練習試合をしているところだった。
「勝負あったな」
「悔しい、レンとエステル2人掛かりでも勝てないなんて!」
レンはそう言って手に持っていたロッドを落とした。
度重なる試合の連続で、レンにも限界が来たらしい。
「みんな夕食ができたよ」
「おっと、もうそんな時間か」
家の中からヨシュアが出て来て声を掛けると、カシウスは暮れなずむ空を眺めてそうつぶやいた。
エステル達がリビングに入ると、テーブルにはヨシュアの作った料理が湯気を上げて並んでいるのが見える。
「ほほう、美味そうじゃないか」
「これなら良いお婿さんになれそうじゃない」
「まったく、変な事言わないでよ」
カシウスとレンがニヤケ顔で言うと、ヨシュアは少し困った顔で言い返した。
「それにしても、今日はいつもより輪を掛けて豪華なメニューね」
「父の日だから、この機会にたっぷりと恩返しをしようと思って」
エステルにヨシュアはうなずいてそう答えた。
「父の日?」
「自分を育ててくれたお父さんに感謝する日よ」
レンが不思議そうな顔をして尋ねると、エステルは笑顔を浮かべて答えた。
はるか昔、リベール王国に仕える若い騎士が、男手一つで育ててくれた自分の父親を称える日を褒美として国王に申し出た所、受け入れられて『父の日』と言う祝日が誕生したのだとカシウスは話した。
「ふうん、それならレンは誰に感謝すればいいのかしら?」
レンの質問にエステル達は困った表情で顔を見合わせた。
事情があったとは言え実の両親達に捨てられてしまったレン。
長旅の末に実の両親達を見つけた時には、すでに家族としてレンが入る余地が残されていないと言う現実を突き付けられてしまったのだ。
「だって、レンは誰にも育ててもらった覚えなんてないんだもの」
結社は幼いレンを拾い保護したが、それは執行者と言う駒として利用するためだった。
ヨシュアも同じ結社に居ながら、自分が先に脱退しレーヴェにレンを任せきりにしてしまった事に負い目を感じていた。
しかしヨシュアは今度こそはレンに手を差し伸べると胸の中で誓い、声を掛ける。
「だから、これから新しいパパを見つけるんだよ」
「えっ?」
ヨシュアの言葉にレンは驚きの声を上げた。
「僕もこの家に来た直後には、父さんの事を父さんって呼ぶ気持ちにはなれなかった。だけど家族として暮らして行くうちに、自然と父さんと呼ぶようになったんだよ」
「レンもいつかヨシュアと同じ気持ちになれるのかしら?」
「ああ、これからは俺達がレンを守ってやる」
レンが首をかしげながらつぶやくと、カシウスは胸を張って答えた。
「じゃあ、もうレンを置いて消えちゃわないって約束して」
レンは過去に何度も肉親を失ってしまい、心に深い傷を負っていた。
エステル達はレンを安心させるようにギュッとレンの手を握り、レンを離さないと誓いを立てた。
「さて、レンもブライト家の一員となったからには、家事とかしっかりやってもらうわよ!」
「はっはっは、エステルも人の事をとやかく言う前に頑張れよ」
「サボり魔はエステルの方なんだから」
カシウスとヨシュアが指摘すると、エステルは顔をふくれさせる。
「失礼ね、あたしだって正遊撃士の名に恥じないように頑張ってるんだから」
「そう? 影の国に居た時もエステルってば料理とか苦手そうにしてたじゃない」
レンまでもがエステルにツッコミを入れると、カシウスとヨシュアも大声で笑い、エステルも巻き込まれる形でレンと一緒に笑った。
ブライト家のリビングに笑い声が満ちた後、カシウスはニヤケ顔でエステルに尋ねる。
「それでエステルは俺に何をプレゼントしてくれるんだ?」
「お手本を見せて欲しいわね」
「えっ!? ええっと……」
ヨシュアに言われるまで父の日の事を忘れていたエステルは、ごまかし笑いを浮かべて言葉を濁した。
「それならば、これを使わせてはくれないか?」
そう言ってカシウスが懐から取り出したのは、『肩たたき券』と下手な字で書かれた紙だった。
「今まで家にあまり帰れなくて使う機会も無かったしな」
「あたし、父さんと戦った後だからヘトヘトなんですけど」
疲れた顔でエステルは息を吐き出した。
エステルの書いた『肩たたき券』は文字は汗でにじんで、紙は黄ばんでしまっていた。
「箱の中に入れておけばこんなのボロボロにならずに済んだのに、どうしてポケットに入れっぱなしにしておいたの?」
「これは俺のお守りみたいな物だからな」
レンの指摘に対してカシウスは真剣な顔をして答えた。
「お守り?」
「ああ、家に帰ってエステルに肩を叩いてもらうまで死んでなるものかって気持ちになれるのさ」
「父さん……」
カシウスの言葉を聞いたエステルは目を潤ませた。
「でもエステルってば、まったくのお子様ね、そんな一時しのぎの手を使うなんて」
「仕方無いでしょ、実際に子供だったんだし」
レンが指摘すると、エステルはむくれ顔でそう答えた。
「エステルは無計画にお小遣いを使ってしまうから、僕と暮らし始めるようになるまで肩たたき券やお手伝い券で誤魔化していたみたいだ」
「ふーん、それはひどい有様ね」
「レンに余計な事を教えないでよ」
エステルは口をとがらせてヨシュアをにらみつけた。
「でも、今のレンにぴったりのアイディアかもしれないわ」
レンはそうつぶやくと、夕食の途中だと言うのに席を立ってカシウスの部屋へと駆け込んでしまった。
「どうしちゃったのかしら?」
「あれは何か企みを思い付いた顔だね」
エステルのつぶやきに、ヨシュアはそう答えた。
「はい、カシウスにプレゼントよ」
リビングに戻って来たレンは、カシウスに自作の『肩たたき券』を渡した。
「抜け駆けはダメよ、あたしが先に父さんの肩を叩くんだから!」
「あら、エステルはさっきの戦いでヘトヘトに疲れているんじゃなかったの?」
エステルの言葉を聞いたレンがからかうようにそう言うと、カシウスが仲裁に入る。
「分かった、今回はエステルに肩を叩いてもらおうじゃないか」
「えーっ、どうして?」
カシウスがそう言うと、レンは不満そうに声を上げた。
「今ここでレンにもらった分をすぐに使ってしまったら、お守りに出来なくなるからな」
「そう言う事なら、仕方無いわね」
レンは渋々ながら納得して引き下がると、エステルは満足した笑顔でカシウスの肩を力一杯叩き始めた。
「ちょっと力加減が強すぎやしないか?」
カシウスは痛がりながらも、嬉しそうに口を歪めていた。
来年の父の日はレンがカシウスの肩をたたく約束をしている。
その頃にはレンもすっかりブライト家の家族としてなじんでいるのだとエステル達は思うのだった。
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新世紀エヴァンゲリオンSS
本編LASVer. サブタイトル『危険なプレゼント』
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父ゲンドウの招集に応じ、第三新東京市にやって来てエヴァンゲリオンのパイロットとなったシンジ。
迫りくる使徒を撃退し戦火を上げるものの、ゲンドウはシンジを直接褒める事は無かった。
「父さんは僕の事を何とも思ってないのかな……」
「そんなに気になるなら、はっきり聞いてみれば良いじゃない」
葛城家の台所でため息を付くシンジに、アスカがあきれた顔で声を掛けた。
「だ、ダメだ、父さんに聞く事なんて出来ないよ」
「まったく情けないわね……でも、確かめる方法が無いとも言えないわ」
「どんな?」
アスカの言葉を聞いたシンジは明るい表情になってアスカに尋ねた。
「今度の日曜日って父の日だから、司令にプレゼントをしてみるのよ」
「ええっ!? ……でも父さんが受け取ってくれなかったら、どうしよう」
「直接聞くよりも、ずいぶんマシになったじゃないの」
「それはそうかもしれないけど、やっぱり怖いよ」
「覚悟を決めて、行くわよ!」
「どこへ何しに?」
「プレゼントを買いに、デパートへよ!」
即断即決即実行、アスカはシンジの腕を引っ張って葛城家を出発するのだった。
そしてしばらくして、シンジとアスカはデパートへと到着した。
「プレゼントって言っても、何が良いのかな?」
「そうね、愛情の度合いをズバリ確かめるなら身に着ける物ね」
シンジの質問にアスカは自信満々に胸を張ってそう答えた。
だがゲンドウはネクタイも締めないし帽子もかぶらない。
なのでアスカと相談した結果、シンジは腕時計をゲンドウにプレゼントする事に決めたのだった。
そして迎えた日曜日、シンジとアスカはネルフへ行き、廊下でゲンドウを待ち伏せする。
「ほらシンジ、司令が来たわよ」
「うん……」
アスカが声を掛けても、シンジはうつむいて物陰から出ようとしない。
「まったく、世話の焼けるやつね!」
苛立ったアスカはシンジの腕をつかみ、廊下を歩いているゲンドウの前に躍り出た。
「何の用だ」
突然立ち塞がったアスカとシンジに対して、ゲンドウは落ち着いた低い声で問い掛けた。
ゲンドウに睨まれただけで震え上がってしまったシンジだが、アスカがここまでお膳立てしてくれたのを無駄にするわけにはいかないと、勇気を振り絞って包装紙に包まれた箱を取り出す。
「これ、父の日の……プレゼント」
シンジに箱を突き出されたゲンドウは、何の反応も示さなかった。
「腕時計なんですけど、お気に召しませんか?」
アスカがそう声を掛けると、ゲンドウは付けていた自分の腕時計を外しシンジに突き付ける。
「……それをよこせ」
「う、うん」
シンジは戸惑いながらもゲンドウから時計を受け取り、プレゼントの箱をゲンドウに渡した。
ゲンドウはプレゼントの箱を受け取ると、シンジ達の方を見向きもせずに足早に立ち去った。
「……父さん、喜んでくれたのかな?」
「受け取ったんだから、そうに決まってるわよ」
「だけど、何も言わないで行っちゃったし……」
「アレは照れて逃げ出したのよ」
「照れた!? あの父さんが!?」
「まったく、司令ってば素直じゃないんだから」
アスカは苦笑してそうつぶやいた。
そのアスカの顔はあきれながらもどことなく嬉しそうだった。
しかし話はこれだけでは終わらなかった。
ネルフの帰り、シンジとアスカは覆面の男達に襲撃を受けたのだ。
「うわっ!」
「きゃああっ!」
倒れたシンジを見て、アスカが悲鳴を上げた。
「こいつはゲンドウでは無いぞ!?」
「どう言う事だ」
襲撃した男達も予想外の事態に驚いている様子だった。
そして、うろたえた様子で覆面の男達は逃げ出した。
「待ちなさい!」
アスカが後を追いかけたが、覆面の男達は黒いライトバンに乗って姿を消してしまった。
その後の調査で分かった事だが、どうやらゲンドウの腕時計には密かに発信器が付けられていたらしい。
そしてゲンドウが警備の薄い場所に移動したと思い込んだ覆面の男達が、襲撃を決行したようだ。
目的は碇ゲンドウの誘拐だと思われる。
覆面の男達の身元は戦略自衛隊か、日本国政府の手の者か。
どちらにしても、シンジがゲンドウの身代りに襲われた事は確かだった。
それを知ったアスカはゲンドウがシンジを利用したのだと思い憤慨した。
しかしゲンドウがシンジをわざわざ囮にするとは考えられないとミサトが説明すると、アスカは誤解を解いた。
シンジは気絶させられただけで大した外傷も無い様に思われたが、大事を取って検査入院する事になった。
そして病室のベッドで眠るシンジの元に現れたゲンドウの姿を、シンジのお見舞いに行こうとしたアスカは目撃した。
ゲンドウは眠るシンジに向かって何かを小声でつぶやいたが、小さすぎて廊下に居るアスカには聴き取れなかった。
果たしてそれは自分の油断から危険な目にあわせてしまった謝罪の言葉なのか、息子の身を心配する言葉なのか。
アスカはゲンドウも人の親だと少し安心したと同時にシンジを羨ましく思ったのだった。
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涼宮ハルヒの憂鬱SS
ハルキョンVer.サブタイトル『親父との思い出』
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気象庁の梅雨入り宣言がされた6月のとある日曜日、俺はハルヒと地元にある球場へ野球観戦へ来ていた。
ハルヒの親父さんが知り合いからペアチケットをもらったらしいのだが親父さんは都合が悪くて行けず、俺がハルヒに誘われたのだ。
しかしどうして俺なんだ、長門に朝比奈さん、古泉、鶴屋さんだっているだろうに。
「みんな誘ったけど、外せない予定があるって断られたのよ」
嘘だ、そんな都合の良い話があるものか。
暇そうにしていた妹がミヨキチの家族のバーベキューに招かれたのも、長門の情報操作の仕業だろう。
球場を埋め尽くす観客の中にSOS団のメンバーが紛れて、俺とハルヒの事をニヤニヤしながら見ているに違いない。
俺だって他のやつらと同じように用事があると断ってしまっても良かった。
まあ、ハルヒなら俺の嘘などすぐに見抜いただろうけどな。
どうせ暇だったからハルヒに付き合ってやったんだ、勘違いするなよ?
……って俺は誰に向かって言い訳をしているんだ。
試合が始まり、白いユニフォームを着た先頭打者が、赤いユニフォームのピッチャーの投げた球をスタンドに運びホームランになると、向こう側のベンチの観客は盛りあがった。
それに比べてこちらのベンチからは派手に罵声が飛び交っている。
「こうして生で見ると、テレビより迫力あるよな。ハルヒはこっちの球団のファンなのか?」
「前にも話したと思うけど、あたしはそんなに野球に興味があるってわけじゃないのよね」
「その割には、球技大会では楽しそうにしていたじゃないか」
「あれはSOS団の面子がかかっていたからよ」
どうやらハルヒの親父さんも、熱心な野球ファンだと言うわけでは無く、たまたまチケットが手に入ったから家族で球場に来たらしい。
「あたしの目的は試合じゃ無くて、あの時に見た光景を思い返すためよ」
そうつぶやいたハルヒの視線は、マウンドでは無く観客席の方へと向けられていた。
人が米粒みたいにうごめいている様子は、スケールの大きさを感じさせる。
「あれから調べてみたんだけど、親父の言った通り、この球場には5万人近く収容できるみたいね」
なるほど、それならこの迫力もうなづける。
5万人の群衆に囲まれるなんて事、滅多にないからな。
「でもこの光景も、何年かしたら観れなくなってしまうのかしらね」
「どう言う事だ?」
寂しそうな顔をしてつぶやいたハルヒに俺は尋ねた。
するとハルヒはさびついてしまったライトの鉄骨部分を指差して俺に尋ね返す。
「あんた、この球場を見てどう思った?」
「まあ、ノスタルジーな感じだな」
「何よ、そのオブラートに包んだ言い方は。素直にぼろいって言いなさいよ」
「歯に衣着せない物言いだな」
ハルヒの話によると、この球場は老朽化が激しく、何回も改装されてはいるものの、すでに限界が近づいているらしい。
数年前に、この球場を取り壊してドーム型球場にする計画が持ち上がったが、様々な事情によって頓挫したそうだ。
「親父はあんまり家族と出掛けるタイプの人間じゃないけど、球場に連れて来てくれた事には感謝しているわ」
「珍しいな、お前が感謝だなんて」
思わず本音が漏れてしまったが、ハルヒは気にして居ない様子で話を続けた。
「あたしが球場に来て、この光景を目にしなかったら、そのまま流されるように学校生活を送っていたかもしれないしね」
「SOS団も誕生しなかったってわけか」
「その可能性もあるわね」
だったら俺にも感謝の念を少しでも良いから抱いてくれよ、と俺は心の中でつぶやいた。
「それなら帰った後、親父さんに恩返しでもしたらどうだ?」
「考えておくわ」
俺とハルヒは話を止めて球場を割れんばかりに満たす観客達の声に耳を傾けた。
試合が動く度に、波の様に歓声が湧き起こる。
以前ハルヒから聞かされた話を、俺は迷惑な考えだと感じたが、今こうしてみるとハルヒの気持ちも解らんではないな。
その後俺とハルヒは、ハルヒが料理して親父さんに食べさせる夕食の材料を買って、明るいうちにハルヒと別れた。
だから余計な寄り道なんてしなかったのさ。
……そりゃ残念だって? いいや、散々おごらされる羽目にならなくて、俺はホッとしているよ。
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