よくわかる政治

更新日:2004年07月06日

日米安保条約基礎知識

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今回は、日米安全保障条約についての基礎知識です。なぜ、日米安保は結ばれたのか。そして、どういう歴史をたどったのか。また、これからの日米安保体制はどうなるのか。わかりやすく解説してみました。

1ページ目 【アメリカ・日本両政府の思惑が一致してうまれた日米安保条約】
2ページ目 【安保改定と安保闘争、そして安保体制の定着へ】
3ページ目 【冷戦後の日米安保体制はいったいどこへ行こうとしているのか?】

【冷戦後の日米安保体制はいったいどこへ行こうとしているのか?】
 
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冷戦構造の終結~日米安保条約への「疑問」が浮上

1990年代はじめに冷戦が終わり、ソ連も解体されてしまいます。もともとアメリカとソ連の対立関係を前提とした日米安保体制は、最大の仮想敵国ソ連が消滅するということによって、大きく見直されることになったのですね。

ただ、冷戦構造はなくなったものの、依然として日本周辺は紛争の種があちこちに残っています。北朝鮮の問題。中国と台湾の問題。南シナ海の覇権をめぐる問題。その他、各地で頻発するかもしれない日本周辺の地域紛争問題。

米ソ2極構造の冷戦構造のもとでつくり出した安保体制は、こういう細かなことに対応できるのか、という疑問が各方面から出始めたのですね。日米二国間安保から、もっと他国的な安保体制へ移行しよう、という意見も出されるようになりました。

と同時に、国内においては、沖縄では米軍基地が集中していることに対する抗議運動が、次第に盛り上がってきていました。冷戦が終わったのだから、沖縄に基地を返して。

この動きは、1995年のアメリカ軍兵士による少女暴行事件でピークを迎えました。当時の太田沖縄県知事が、土地を基地に提供する署名を拒否する事態にまで発展しました。沖縄だけでなく、本土でも、安保体制はこのままでいいのか、という声があがってきました。

ポスト冷戦をふまえて行われた日米安保体制の「再定義」

そんななか、それでも日米両政府は安保体制、日米同盟を維持しなければならない、と考えていました。そこで、安保の「再定義」を行うことになったのですね。

日米安保の再定義は、1996年、東京での橋本首相=クリントン大統領の首脳会談で出された共同宣言で示されました(日米安全保障共同宣言)。

それによると、日米安保体制の21世紀の役割は、日本の防衛と「アジア・大平洋地域の安定維持」のための基礎であり、そのために日米の防衛協力は欠かせない、必要なものである。このようなことが宣言され、日米安保体制のさらなる発展がうたわれました。

これをきっかけに、日米防衛協力の強化がさらに図られることになりました。それが1997年に締結された、両国の共同防衛の密接化を規定した「新ガイドライン」であり、そしてそれをもとに1999年制定された周辺事態法だったりしたわけです。

周辺事態法では、「極東」における深刻な事態発生の際(地域紛争とかですね)、日本がアメリカ軍の後方支援をすることを、明文化しました。

周辺事態法 第2条1項
政府は、周辺事態に際して、適切かつ迅速に、後方地域支援、後方地域捜索救助活動その他の周辺事態に対応するため必要な措置(以下「対応措置」という。)を実施し、わが国の平和及び安全の確保につとめるものとする。

第3条1項
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 後方地域支援 周辺事態に際して日米安保条約の目的の達成に寄与する活動を行っているアメリカ合衆国の軍隊(以下「合衆国軍隊」という。)に対する物品及び役務の提供、便宜の供与その他の支援措置であって、後方地域においてわが国が実施するものをいう。(二号以下省略、下線は筆者による)


「9・11」後の日米安保体制はどうなるのか

さらに、「9・11」、あの同時多発テロの後の世界情勢の急激な変化は、日米安保体制にあらたな状況を生み出しました。このあたりのことは、記憶に新しいところかもしれません。

たとえば、アフガニスタンでの米軍後方支援を可能にしたテロ対策特別措置法の制定。アメリカの要請を受け、イラクでの自衛隊活動を可能にしたイラク特別措置法の制定。どれも、紙一重で共同防衛の枠を越えそうな、法律の制定ですね。

テロ対策特別措置法 第2条1項
政府は、この法律に基づく(筆者注:米軍などへの)協力支援活動、捜索救助活動、被災民救援活動その他の必要な措置(以下「対応措置」という)を適切かつ迅速に実施することにより、国際的なテロリズムの防止および根絶のための国際社会の取り組みにわが国として積極的かつ主体的に寄与し、もってわが国を含む国際社会の平和および安全の確保に努めるものとする。


「9・11」のあとの日米安保は、日米共同防衛強化から、さらに一歩進んだ「共同行動」に踏み出しているのかもしれません。

はたして、これからの日米安保体制はどうあるべきなのか。もっとアメリカと共同行動を密にしていくべきなのか。それともここらで一線を引いて、防衛協力にとどめるべきなのか。

いずれにせよ、日米安保体制がおおきな岐路に立たされていることは事実です。今後の日米安保体制はどうすべきなのか、われわれ国民は真剣に考えなくてはならないのではないでしょうか。



>>日本の防衛をしっかり考えよう! おすすめINDEX「平和主義者のための国防・軍事用語集」

(執筆者:辻 雅之)

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