よくわかる政治

更新日:2004年07月06日

日米安保条約基礎知識

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今回は、日米安全保障条約についての基礎知識です。なぜ、日米安保は結ばれたのか。そして、どういう歴史をたどったのか。また、これからの日米安保体制はどうなるのか。わかりやすく解説してみました。

文章:辻 雅之(All About「よくわかる政治」旧ガイド)

(2004.07.06)

1ページ目 【アメリカ・日本両政府の思惑が一致してうまれた日米安保条約】
2ページ目 【安保改定と安保闘争、そして安保体制の定着へ】
3ページ目 【冷戦後の日米安保体制はいったいどこへ行こうとしているのか?】

【アメリカ・日本両政府の思惑が一致してうまれた日米安保条約】
 
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日米両政府の思惑でできた日米安保体制

前回の記事でも述べたとおリ、第2次世界大戦直後、日本を占領していた中心であったアメリカは、日本を非武装化して軍事的に無力な存在にしようとしていました。

しかし、冷戦が始まりました。アメリカとソ連による全世界の覇権争いです。アメリカは、たくさんの犠牲を払って、日本の占領の主導権をもぎとったわけですから、このまま日本をアメリカ側陣営につかせて、ソ連など共産主義国家から日本を守っておきたいと考えるようになりました。

また、1950年に激しい朝鮮戦争が起こった朝鮮半島や、共産化された中国、ソ連の国土などにきわめて近い位置にある日本は、アメリカ陣営にとっても軍事的にも重要な拠点で、アメリカは日本でいつでも自由に軍事的な行動がとれるようにしておきたかったのですね。

そこでアメリカは占領後も引き続き軍隊を日本に駐留させることができるよう、日米安全保障条約を締結して日本への軍事的影響力を残すことにしたわけです。

ただ、こんなアメリカの要求を、日本は半ば脅されて、はいわかりましたといったわけではありません。日本側、特に当時の吉田茂首相には、こんな思惑がありました。

つまり、この冷戦構造の中で日本が軍事的になにかやらかすのは無理だ。日本は経済大国として発展する道を選ぶ。日本の復興そして経済発展を実現するには、できるだけ軽武装で、つまり軍事費にあまりお金をかけないことが重要だ。この吉田茂の考えを吉田ドクトリンといいます。

そんな日本、吉田政権にとっては、アメリカ軍の日本駐留は渡りに船。アメリカ軍がいれば、それが侵略への抑止力となり、日本は軽武装で国を守れる。まさに「乗った!」ということだったわけです。

こうして、1951年、サンフランシスコ平和条約締結の1時間後に、日米安全保障条約が日米両国の間で締結されることになったのです。

日米安保体制の歴史

こうしてできた日米安保体制は、大きく分けて3つ、さらに細かくわけると4つの時代にわけられると考えられます。

◎1 旧安保条約時代
   ただ単にアメリカ軍の日本駐留を許したのみで、アメリカの日本防衛義務は「?」

◎2 新安保条約時代
   アメリカの日本防衛義務を明確化、日米共同防衛体制に
    2-a 国民の反対と安保闘争
    国民が大きく安保体制に反対し、2度の激しい安保闘争がおきた
    2-b 安保体制の定着
    1970年代後半に日米ガイドラインがつくられ、安保体制が定着

◎3 ポスト冷戦後の安保体制
   冷戦終結後、安保体制を見直し、対ソ連防衛体制から、地域紛争への対処体制へ
   安保体制の「再定義」実施

旧安保体制は日本を独立国扱いしていなかった

さて、1951年につくられた安保条約は、日本からみてあまり平等なものとはいえませんでした。

条約では、日本はアメリカに基地を貸して駐留を許すのみで、日本を防衛してもらえるかどうかは、条約上明確ではありませんでした。「日本の安全に寄与する」とだけ規定され、日本が攻撃を受けた際、どうしてもらえるのか、はっきりしませんでした。

また、日本の内乱などにアメリカ軍が介入することができる規定がありました。これも、独立国日本としては、あまり愉快なものではありませんでした。もし内乱がおこってしまったら、アメリカ軍が再び日本を制圧し、占領統治が始まってしまうかもしれない。

旧安保条約 第1条(抜粋)
・・・アメリカ合衆国の陸軍、空軍及び海軍を日本国内及びその附近に配備する権利を、日本国は、許与し、アメリカ合衆国は、これを受託する。この軍隊は・・・日本国における大規模の内乱及び騒じょうを鎮圧するため日本国政府の明示の要請に応じて与えられる援助を含めて、外部からの武力攻撃に対する日本国の安全に寄与するために使用することができる
(法律文化社『現代国際政治資料集』杉江栄一編より引用 下線は筆者)

こうしたことで、新しい安保条約が必要、という声がおもに与党内からおこるようになったのですね。新安保条約の締結については、次のページを見ていきましょう。

(執筆者:辻 雅之)

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