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【最大汚染源の2号機】 損傷箇所特定できず 東電最終報告の全容判明


 事故後の福島第1原発。左から4号機、3号機、2号機、1号機=2011年3月20日(エア・フォート・サービス提供)
  東京電力の福島第1原発事故調査委員会(社内事故調)がまとめた最終報告書案の全容が12日、判明した。深刻な環境汚染を招いた放射性物質が2号機の格納容器から漏れ出たとの分析結果などをあらためて盛り込んだが、2号機の詳しい損傷箇所の特定は避けた。東電は外部の専門家による検証委員会の評価とともに近く公表する。

 報告書案はA4判約360ページ。地震による原発の主要設備への損傷は「ほとんどなかった」と説明。大気中に放出された放射性物質の推定量が90万テラベクレル(テラは1兆)に上ったことを、飛散状況を示す図解とともに記載した。

 原発の北西方向に重大な汚染を引き起こした最大の原因は、当初考えられていたベントによるものではなく、2号機の格納容器から漏れ出たガスだったと結論付けたが、詳しい損傷箇所や原因の記述はなかった。

 また福島県沖で大きな地震が過去になかったため巨大な津波の発生は想定しておらず、国の研究機関も同じ評価だったとした。事故4日前の昨年3月7日に、津波の長期的評価について経済産業省原子力安全・保安院と検討した際も「今すぐ対策を実施するようにとの指示は受けなかった」と、判断の妥当性を強調している。

 原子炉冷却のため事故後に自動的に起動した1号機の非常用復水器(IC)を運転員が手動で止めた問題で、政府事故調から「機能の認識や操作習熟が不足し、対応の遅れを招いた」と指摘されたことについて「運転員は必要な知識を有していた」と反論した。

 ただ吉田昌郎(よしだ・まさお)前所長や本店幹部が状況を把握していなかった反省から「過酷な状況下でも情報共有する手段を構築しておくことが必要」とした。

 報告書案には、事故当時の官邸との情報連絡や広報体制のほか、撤退問題の調査結果も盛り込まれた。

 ◎依然残る疑問点

 【解説】東京電力による福島第1原発事故の社内調査の最終報告書案は、放射性物質の大量放出につながった2号機の損傷箇所を特定しないなど重要な疑問が未解明のままで、事故調査の難しさをあらためて示した。

 事故発生から半年余りは1~4号機のいずれも水素爆発が起きたとの見方が一般的だった。ところが、東電の社内調査で、2号機だけは水素爆発が起きなかったことが判明し、何が起きたのかが謎になっている。

 東電は、昨年3月15日、2号機の原子炉格納容器の圧力が短時間で低下したことを根拠に、2号機から放射性物質の大量放出があった可能性が高いとしている。

 高温、高圧の蒸気で格納容器のつなぎ目が破損し、隙間ができた可能性が指摘されているが、報告書案は「格納容器内のガスが何らかの形で大気中に放出された」としか述べていない。

 また報告書案は、地震の揺れで原発の損傷はなかったと結論付けた。津波が来るまでは原発のデータに異常はなく、「安全上重要な主要設備だけでなく、重要度の低い機器も機能に影響する損傷はほとんどなかった」としている。

 安易な結論付けは、ほかの原発の地震対策をおろそかにしかねない。自然災害への備えは、より慎重な姿勢で臨むべきだろう。

 (2012年6月12日、共同通信)

2012/06/12 18:44

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