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牛の生レバー 飲食店での提供禁止決定
6月12日 16時56分

牛の生レバーについて、厚生労働省は、重い食中毒を防ぐ有効な対策がないとして、来月1日から飲食店などでの提供を禁止することを正式に決めました。

これは、12日開かれた食品の安全の専門家などから成る厚生労働省の審議会で決まったものです。
この中では、厚生労働省の調査で牛のレバーの内部から重い食中毒を引き起こすおそれのあるO157などの病原性大腸菌が検出されているうえ、安全を確保するための有効な対策がないとして、生レバーの飲食店などでの提供を禁止する厚生労働省の方針が説明され、了承されました。
会議では、先月までの1か月間に寄せられたおよそ1500件の市民からの意見も報告され、ほとんどが「生レバーを食べるかどうかは消費者が選択すべきだ」などと規制に反対するものだったということですが、厚生労働省は、現状では提供の禁止はやむをえないとしています。
牛の生レバーの提供を巡っては、去年、富山県などの焼き肉チェーン店でユッケを食べた人に広がった集団食中毒事件を受けて、厚生労働省は去年7月から飲食店などに対して提供の自粛を求めていますが、現在も提供する店はあり、食中毒も発生しています。
提供の禁止は来月1日からで、違反し、行政指導に従わなかった飲食店や小売店などの経営者には200万円以下の罰金、または2年以下の懲役が科せられることになります。

なぜ禁止になったのか

厚生労働省が牛の生レバーの提供を禁止するのは、去年の調査でレバーの内部から重い食中毒を引き起こす「病原性大腸菌O157」が検出されたためです。
厚生労働省が去年、全国16か所の食肉衛生検査所で173頭の牛のレバーを調べたところ、3頭のレバーの内部からO157などが検出されました。
牛のレバーの内部からはこれまで食中毒を引き起こす細菌「カンピロバクター」は確認されていましたが、僅かな菌でも重症化するおそれがあるO157が検出されたのは初めてでした。
生レバーを安心して食べられるかどうか検討するため、肝臓の表面に付着させたO157を食品を殺菌する薬品で取り除く実験が行われましたが、通常の濃度では完全には除去できませんでした。
また、レバー内部の殺菌についても有効な方法はなかったということです。
このため厚生労働省は、現段階では食中毒を防ぐ有効な対策がないとして、牛の生レバーの飲食店などでの提供禁止を決めました。
厚生労働省食品安全部基準審査課の森口裕課長は、「O157など病原性大腸菌による食中毒は非常に重い症状を引き起こすため、ほかの食中毒の原因菌とは異なる対応が必要だ。重い食中毒を防ぐ有効な対策が見つかっていない現状では、国民の健康を守るために、牛の生レバーの提供禁止を優先させた」と説明しました。
そのうえで、「引き続き業界団体と協力して研究を行い、食中毒を防ぐ有効な対策が見つかれば、生レバーの提供を再開することも検討していきたい」と話しています。

新しい提供の基準は

牛のレバーの提供について、厚生労働省は食品衛生法に基づく基準を新たに設け、生の状態での提供を禁止することにしています。
基準では、加工や調理の方法が定められ、レバーの中心部を63度の温度で30分以上加熱殺菌することなどが義務づけられます。
このため飲食店などは、生の状態でレバーを提供することができなくなります。
基準に違反し、行政指導に従わなかった飲食店や小売店などの経営者には、200万円以下の罰金、または2年以下の懲役が科せられます。
レバー以外の牛の生肉は、去年、富山県などの焼き肉チェーン店で、ユッケを食べた人に広がった集団食中毒事件を受けて新たな基準が設けられ、生肉を提供する際には、肉の表面の加熱が義務づけられました。
鳥の生肉は、これまでに病原性大腸菌による食中毒の報告がなく、規制はありませんが、厚生労働省は、別の細菌などによる食中毒の危険性があるため、加熱するよう呼びかけています。
また、生がきや刺身などの魚介類は、加工や保存の基準などを満たしたものだけが生食用として販売や提供が認められていますが、厚生労働省は、抵抗力の弱い高齢者や子どもは加熱して食べるよう呼びかけています。

業界は見直し求める 安全な処理方法の研究も

飲食店などでの生レバーの提供禁止について、肉の小売り店などで作る全肉連=全国食肉事業協同組合連合会は、「何を食べるかは自己責任で、法律で規制すべきではない。生レバーが禁止されることで業界も大きな影響を受ける」として見直しを求めていて、これまでに6万人を超える署名が集まったということです。
全肉連によりますと、牛の生レバーを使った「レバ刺し」は焼き肉店の人気メニューで、提供が禁止されると年間で300億円以上の売り上げが失われるということです。
全肉連の小林喜一専務理事は「多くの消費者から、規制はおかしいという声が上がってきている。何百億という売り上げがなくなることにもなり、経済的な影響も大きい」と話しています。
さらに、全肉連など業界団体は、専門家と共に研究会を作り、牛の生レバーについて安全性の高い処理方法を探る研究を進めています。
研究会では、高い濃度の塩素系の消毒薬をレバーに注入し、いったん凍結したうえで解凍する方法で、検出される病原性大腸菌O157を大幅に減らすことができたとしていて、今後さらに実験を続けて、より安全性の高い処理方法を厚生労働省に提案していくとしています。
また、消毒や凍結などによる味への影響は少ないとしていて、実際に試食した研究会のメンバーは「甘みもあり、処理されていたことによる差はまったく感じない」と話していました。
実験を行った大阪府立大学大学院の山崎伸二教授は、「消毒薬は食品添加物としても認められているものを使った。近い将来、再び生レバーを食べることができる環境を作っていきたい」と話しています。

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