陸上自衛隊の精鋭隊員「レンジャー」の訓練生ら約20人が12日、東京都練馬区と板橋区の市街地を行進した。武装したレンジャーによる東京23区内での行進は42年ぶり。顔に迷彩を施し、小銃にヘルメットといういでたちのレンジャーの姿に驚く住民もいた。
11週間の訓練の最終日で疲れた表情の訓練生らは午前9時、板橋区内の荒川河川敷を出発。練馬駐屯地までの約6.8キロの道のりをゆっくりと歩いた。陸自によると、地方部隊で実施されるレンジャー訓練で公道を歩く訓練は珍しくないという。
河川敷には約100人の市民が集まった。「私たちの町を演習場にするな」とする反対派と、「自衛隊頑張れ」という賛成派が声援を送った。行進を見かけた板橋区の主婦(63)は「普段見慣れない異様な雰囲気にびっくりしたが、いざという時に必要な訓練と言われるとそうなのかな」と話していた。
レンジャーは少人数で敵地に潜入し、重要拠点の破壊工作などを担う。今回の訓練をめぐっては、反発する住民らが東京地裁に行進禁止の仮処分を申請する騒動になったが、地裁は11日に「住民らがレンジャー訓練生に遭遇しても主観的な不快感にとどまる」として却下した。住民側代理人の種田和敏弁護士は現場で行進をみて、「疲れ切って鋭い目をした隊員たちが街中を歩く光景は異様。住民の平穏な生活のためにも、行進はこの一度限りにすべきだ」と語った。
森本敏防衛相は12日、記者団に「この種の訓練は今までもやってきたし、特異なことではないと思う。安全性に十分配慮するということで許可した」と述べた。(其山史晃)