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特集社説2012年06月11日(月)

東電の料金値上げ 家庭だけに負担押しつけるな

 経済産業省は東京電力が申請した家庭向け電気料金値上げに関する公聴会を終えた。利用者や有識者から厳しい意見が相次いだが、当然だ。東電からしか電気を買えない仕組みの中で、一方的に値上げを押しつけるやり方がすんなり理解されるはずがない。
 東電は収益構造の見直しや人件費削減などさらなる合理化に努めねばなるまい。経産省には、増収のための安易な「値上げありき」の姿勢を排した厳正な審査を望みたい。
 東電は原発の代替となる火力発電の燃料費増加を理由に、7月1日から家庭向けで平均10・28%の値上げを申請している。
 そもそもこの値上げは、柏崎刈羽原発(新潟県)の2013年4月からの順次再稼働を前提にコスト計算しており、根本から首をかしげざるを得ない。再稼働しなかった場合、さらに5%余り上がるとの試算を示し不安をあおるが、原発が火力発電に比べて割安との神話は崩れている。福島第1原発事故後、原発の経済性についての根拠はなんら示されていないことを確認しておきたい。
 現行の総括原価方式では、燃料費や人件費などの発電コストをほぼ電気料金に転嫁できる。合理化努力がなくても利益を確保できる制度であり、今こそ原価算定にはかつてない厳しい運用が求められよう。
 おまけに東電は自由化された大口の企業には安く売り、利益の9割を規制で割高な家庭向け電気料金から稼いでいた。負担を消費者にのみ押しつける家庭依存の利益体質の上にあぐらをかいてきたのだ。理不尽極まりない。この収益構造を見直さない限り、どんなわずかな値上げでも到底納得し得まい。
 厚遇批判のある人件費について、西沢俊夫社長は「今冬以降は年俸制に移行し、賞与も支給しない方向で組合と交渉する」としている。しかし、12年度に引き下げた社員の平均年収を13年度には大企業平均以上に引き上げる計画だ。いやしくも公的資金が投入される以上、世間並み以下に抑えるのが道理ではないか。臆面もなく、こうした姿勢を示すところに企業の甘い体質が見てとれよう。
 それにも増して福島第1原発事故の責任は経営層にあることを忘れてはならない。しかるに事故当時の会長、社長ら役員が関連会社の役員に続々納まる予定だ。その厚顔ぶりにはあきれるほかはない。
 このまま仮に、値上げが申請通りや言い訳程度の修正で認可されるとしたら、政府と東電の「出来レース」との批判は免れない。申請を査定する外部有識者の専門家委員会には、利用者の疑問や意見を真摯(しんし)に受け止め、審査に反映させる重い責務がある。

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