野田佳彦首相は、米軍海兵隊が今夏予定している垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)への配備に関し、仲井真弘多知事に直接理解を求める方向で調整に入った。
首相の沖縄訪問は、沖縄戦終結の日に当たる今月23日の「慰霊の日」で検討され、その際にオスプレイ配備を要請すると報じられた。藤村修官房長官はこれを否定し、政府内では「慰霊の日」以外にすべきだと意見が出ている。だが、沖縄が非戦の祈りに包まれる時機にあえて新たな軍事的負担を強いるような政府の姿勢は、到底容認できない。
首相は先月15日の沖縄復帰40年式典で「沖縄の基地負担軽減を着実に進めていくことが最重要課題」と述べたばかりではないか。オスプレイ配備強行は、沖縄にさらなる危険と犠牲を強いる愚行だ。再考を強く促したい。
ヘリコプターと固定翼機の機能を併せ持つオスプレイは、戦闘の最前線に投入される海兵隊の輸送機。2000年までに重大墜落事故を4回起こして多数の犠牲者を出したため、開発が一時停止された経緯がある。4月にもモロッコで訓練中に墜落し、米兵4人が死傷した問題機種だ。
米軍は、その危険な航空機を、住宅地に囲まれ「世界で最も危険」と言われる普天間飛行場に配備しようとしている。
沖縄では、県議会がオスプレイ配備反対を決議、41市町村議会のうち39議会が反対や撤回を求める意見書や決議を採択している。仲井真知事も「とても受け入れがたい」と表明しており、オスプレイ拒否は沖縄の総意と言える。
実際、04年には普天間飛行場に隣接する沖縄国際大構内で米軍ヘリが墜落した。沖縄の人々にとってオスプレイ配備は、命と暮らしを今以上に脅かす事態を招来するものでしかないのだ。
モロッコ墜落事故について米軍は「人為的ミス」との見解を防衛省に非公式に伝え、8日には「機体に不具合はなかった」と調査概要を連絡してきたが、最終調査結果の判明は年末ごろまでずれ込む見通しだ。今夏配備の日程ありきの疑いが拭えない。
これに先立ち、森本敏防衛相は「オスプレイ配備前に調査結果が提供されるのが望ましいが、そうならないこともあり得る」と述べ、民主党沖縄県連から辞任要求を突きつけられていた。こうした言動が、沖縄の人々の思いと生命を軽視し、不信、怒り、悲しみを深めることに、政府は思いを致さなければならない。
日本の首相の役割は、米軍の代理人として沖縄を説得することではない。沖縄の声を聴き、思いを代弁して、米国に対して「是は是、非は非」と交渉することである。