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大阪府知事「死にたいなら自分で死ね」は首長失格

2012.06.11 22:00:52 記者 : ガジェ通ウェブライター カテゴリー : 政治・経済・社会 タグ :



大阪で起きた通り魔事件について、大阪市長は11日、「“死にたい”と言うんだったら自分で死ねよと。人を巻き込まずに自己完結してほしい」と発言した。この発言について、『Twitter』などでは「言い方は荒いがまっとうな発言だ」という意見が大半を占めている。しかし首長としてこの考え方でいいのかということに関して、私は疑問に思わざるを得なかった。はたして、弁護士出身である橋本市長からもまっとうな発言だと認められるのだろうか。

この問題について、人権という面から考察しなければならない。「人権が制約される場面として、どのような場面が浮かぶか」という問いに対して、「公共の福祉に反する場合」という解答は正解だが、もうひとつ人権が制約される場面がある。それは自己加害を防ぐために規制する場合である。具体的には、未成年者の飲酒喫煙・麻薬の使用・バイク乗車時のヘルメット着用義務などである。これをパターナリスティックな制約と言う。
憲法には、国家が国民に介入する場面は最小限に留めるという発想が根本にある。したがって、多くの自己加害は推奨されないが規制されない。健康を損なうほどの過度なダイエットは法律で罰せられないし、自転車運転時のヘルメットも着用義務はない。パターナリスティックな制約は、あくまで人格的自立そのものを回復不可能なほど永続的に害する場合のみに限定して国の介入を許すというものである。

自殺は人格的自立そのものを回復不可能なほど永続的に害する場合の頂点にある行為である。なぜ罰則化されていないのだろうか。
「自分の身をどうしようが勝手である」とか「誰にも迷惑をかけないから」とかいう理由は適切ではないのは上記で明らかにした。加えて、同意がある行為は違法でないにも関わらず、自殺幇助(ほうじょ)や同意殺人が違法である点も指摘しておきたい。生命については、たとえ自分の身であろうとも害することもできないのである。
したがって、自殺に違法性がないと考えるのは妥当ではない。また、自殺幇助が罪であるのに自殺は罪ではないというのでは、共犯における違法性の連帯の原則に反する。

ではなぜ罰則がないのか。それは適法行為の期待可能性がないため責任を問うことができないからである。
適法行為の期待可能性とは、違法行為の当時、適法な行為を選択できる可能性のことである。例えば、飢えに苦しむ者が最終手段として食糧を窃盗したときなどに問われる。期待可能性が責任を問う要素になる理由は、適法な行為を行なうことが期待できないような場合においては、違法な行為をあえて選択したとは言えず、責任を論ずる前提を欠くからと説明される。
自殺を実際に行うことを考えてしまう場合、追い詰められて自殺する以外のことを考えられず、“違法な行為をあえて行った”とは必ずしも言えないことから、責任が阻却されるのである。

人命はいかなるものにも代え難く、自殺は違法性を認められるほどに避けたい行為である。周りの人々を巻き込まなければいい、死を選びたいならどうしようもない、などと発言した大阪府知事は、明らかに首長失格である。

松井一郎大阪府知事の写真は、大阪府ホームページより引用しています
http://www.pref.osaka.jp/j_message/index2.html

※この記事はガジェ通ウェブライターの「きっしー」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?


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