こちらの商品は、GA文庫の同名作品のアニメとなります。
過去2度FHASHアニメ化した同作ですが、このSAN期は待望のフルアニメーションとなります。
30分枠となっており、今までは敬遠していた人も触手が動くことでしょう。
最初に話の作りについて説明します。
基本的には学園もののラブコメ。
危険な状況に追い込まれた高校生の男の子八坂真尋を助けるために美少女が現れ、共に日々の生活を送ることになる、というのが冒頭の流れです。
一見すると何の変哲もない王道ラブコメに見えますが、この作品のオリジナリティとなっているのはニャル子と名乗る美少女がクトゥルフ神話に登場する人間を破滅へ追い込んで楽しむ無貌の神、ニャルラトホテプということ。
外面こそ美少女ですが、真の姿は人間が見ると発狂する異様な姿であるニャル子は時折残忍さや非情さを見せることもあります。
そんな彼女の正体を真尋は神話を通して知っているので、身の安全を図るべく警戒し拒絶します。
男性向けラブコメでは普通は男性側が女性側にアプローチをかけたり恥ずかしがったりすることが多いのですが、この作品はその関係が逆転しており、一目惚れし最初から男の子に好感を持つ主人公のニャル子と、
そんな彼女に恐怖感と警戒心を持つヒーロー(ヒロイン)真尋が活躍するという逆転した作風となっています。
また、この『見た目は美少女だけれど実際は恐ろしい存在』というニャル子の特徴が『どうして可愛い女の子に言い寄られているのに冷たく当たるのか』という視聴者が疑問に思いがちな真尋の行動に自然さを持たせているのもポイントで、
クトゥルフ神話を組み込むことでありがちなラブコメとは一風変わった面白さを持たせています。
ニャル子の性格や口調が極度にうざったく見えないさじ加減なのも評価点です。
次はアニメとしての出来についてです。
アニメの流れは基本的に明るく、軽快。
25分の中にギャグからパロディ、ストーリーにサービスシーンまでぎっしりネタが詰まっており、最初から最後まで楽しんで視聴することが出来ます。
パロディネタが多いのが特徴ですが、視聴時は元ネタを知らなくても問題なし。
特撮・アニメからゲームにクトゥルフ神話を元にしたものまで多岐にわたり背景から台詞に至るまで多数のネタが仕込まれており、初見で全て看破することは困難ですが、
理解できなければ話がわからなくなるようなネタの使い方はしていないので、気になれば後から調べればいいや、程度の意識で問題ないでしょう。
個人的に気になったのは、バトルがネタ・ギャグ要素多めなので緊迫感に欠ける点。
あくまでネタの前フリとして割り切った方が良いでしょう。
キャラクターデザインは総じて可愛らしく描かれていて魅力的。
作画は緻密に書き込まれたハイレベルなものではないですが、きっちり動いていて好感触。
アニメ的に動かしづらいニャル子のチェック柄の衣服もちゃんと動いているのが個人的には高評価です。
声優の演技に関しては、1話では放映時間の半分近く喋り続けていてセリフ量が非常に多い中早口・低く重い一言・性的な台詞まで見事に演じ切って魅力を高めている、ニャル子役の阿澄佳奈の演技に驚かされます。
他のキャラの声も概ね合っており、キャスティングに不満を感じることは少ないでしょう。
原作との違いについてですが、この巻では原作の1巻分を2話にまとめて収録しているので端折っている部分が多いです。
主にカットされているのは細かいパロディ、食べ物や神話の解説、一部の場面など。
話を短くわかりやすくまとめるため、まるで違うシーンになっている場面も結構あります。
とはいえ、あくまで話の流れ自体は同じですし話がよくわからなくなるということはありませんからご安心を。
細かい物語が気になる方は視聴後原作を読んでみるのもいいでしょう。
また中毒性のあるOP曲にも注目していただきたいところです。
曲調自体は電波ソングなものの、クトゥルフネタや名前を織り交ぜた異様な歌詞、耳に残る『うー!にゃー!』という合いの手、可愛らしくも熱のこもった歌声など、このアニメのためだけに作られた、今作品に相応しい一曲となっています。
最後にまとめに移ります。
ネタが多く流れも軽快で、何度も楽しめる作品に仕上がっていて総合的な質は高め。
クトゥルフ神話にありがちな恐怖・絶望感やグロテスクな描写は抑えめですが、神々や用語は作中にも姿を変えて出てきますし、ニャル子の二面性はクトゥルフを下敷きにしているからこそ納得しやすくなっています。
クトゥルフに興味が湧いた方はこの作品の視聴後でも構いませんので、簡単なものから読んでみることをオススメします。
知らなくても楽しめますが、知っていればより深く楽しむことが出来ますしね。
以上、パロディネタが好き、可愛いキャラが活躍する姿を楽しみたい、気楽に楽しめるアニメが見たい、電波ソングが好き、クトゥルフネタが理解できる人にオススメです。
小難しい作品ではないので、気楽に楽しみましょう。