静岡県が可否を検討している温泉の熱を利用して発電する「温泉発電」の事業化が岐路に立たされている。配管設備の設置費用なども含めた1カ所当たりの初期投資が当初想定より最低でも1億円以上加算されることが新たに判明したためだ。県幹部は取材に対し「採算が取れるまで20年かかる。このままでは参入は厳しい」と明かした。
「予定が大幅に狂った。一からやり直しだ」
県企業局幹部は、温泉地という特色が生かすことができ、原発の代替エネルギーのひとつとしても期待される温泉発電の事業化が困難な状況に肩を落とした。
これまでの県企業局の試算は、▽売電単価を1キロワット当たり35円▽特区制度が認められ、発電設備の保守点検を担当する常駐の技術者が不要▽初期費用は4570万円から2億7600万円-などを前提として行われていた。
試算抜本的見直し
県ではこの試算でも、4つの候補地のうち、黒字になるのは東伊豆町の「熱川地区」のみとする厳しい予想を立てていた。しかし、出力125キロワット(一般家庭84世帯分)の発電機を使用した場合、配管工事も含めると初期費用は約4億円にのぼることが判明した。
試算については、発電効率が常に90%以上と設定されていたことも分かった。県企業局幹部は「発電効率の想定には無理がある。太陽光発電すら10%台なのに異常に高すぎる」としており、算定の抜本的な見直しを進めていることを明らかにした。