ここに東芝や日立製作所といった原発メーカーや、電力を大量消費する鉄鋼メーカーなどからの献金も加わる。そして、いざ選挙となれば、これら大企業の労組が組合員の票を取りまとめ、「原発推進に理解のある議員」を国政に送り込むよう奔走してくれる。
'10年の参院選でも民主党は、輿石東幹事長、蓮舫前行政刷新担当相、田中直紀防衛相、北澤俊美元防衛相、江田五月前参院議長、柳田稔元法相、福山哲郎元官房副長官ら47人が電力総連が応援する候補者として機関紙に顔写真入りで取り上げられ、ほぼ半数の24人が当選している。
常識的に考えれば、労組が会社側の意のままに動くことを不思議に思うかもしれない。まして、原発で働くことは、労働者にとって放射能汚染の恐怖に晒されることと同義。労組が先頭に立って「脱原発」を叫んでもおかしくはない。
「裏切った議員には、報いを」
その背景について、労働問題研究の第一人者である昭和女子大学特任教授の木下武男氏が解説する。
「東京電力が労使一体となった時期は早く、'60年代にさかのぼります。なぜ、それが可能になったかと言うと、危険な作業は外部委託し、社員を厚遇したからです。原発は創生期から、社員が担当するのは安全な運転業務で、被曝の恐れがある機器の補修、点検などは下請け作業員任せ。こうして東電労組には、同じ労働者でも自分たちは下請け作業員とは身分が違うという特権階級意識ができたわけです。
東電において、労組に楯突くことは会社に楯突くのと同じで、会社が推す東電出身議員や原発推進派を応援しないと、査定にも響く。この構図は東電だけでなく、他の電力各社も同様です。電力産業は全国組織であり、発電所や営業所が全国各地にあるから、その影響力は絶大。政治家は原発に賛成するか否かで、彼らの支援が得られるかどうかが決まるのです」
「票とカネ」で政治家の生殺与奪は思いのままという労組幹部の驕りは、3・11以降も何ら変わらない。
「裏切った民主党議員には、報いを」
5月29日、東電労組の新井行夫・中央執行委員長は、中部電力労組の大会に招かれ、こう噛みついた。新井氏の発言は次のように続く。「(自分たちを)支援してくれるだろうと思って投票した方々が、必ずしも期待に応えていない」
政府による実質的な国有化が決まったにもかかわらず、この強気。東電本体が1兆円の公的資金(=税金)を受けるのに、政府に「社員のボーナスを」と要求したのと似ている。政治家は完全にナメられている。
本誌は今回、「原発再稼働」を推進している議員30名にアンケートを行った。もちろん、推進派が30人しかいないわけではなく、これまでの発言(オフレコも含む)などを調査し、推進が明確な議員を抽出した。ところが、結論から言えば、回答したのはわずか5人。この5人はいずれも「原発再稼働について賛成」と回答している。
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