【コラム】ヒラバヤシ氏への勲章授与

 日本の公共放送局であるNHKは先週、今年93歳で死去した日系米国人、ゴードン・ヒラバヤシ氏にオバマ米大統領が大統領自由勲章を授与したというニュースを報じた。ホワイトハウスで行われた授与式には、歌手ボブ・ディラン氏ら12人と共にヒラバヤシ氏の妻が出席し、勲章を受け取ったという。自由勲章は米政府が人権向上に貢献した民間人に授与する最高位の勲章だ。韓国メディアもオバマ大統領による自由勲章授与について報じたが、ボブ・ディラン氏の方に目が行き、「ヒラバヤシ」という名前には目が行かなかった。しかし、日本のメディアによるヒラバヤシ氏の受章報道に、多くの日本人は気分をよくしたことだろう。

 ヒラバヤシ氏は「第2次世界大戦時に米政府が日系人を強制収容したのは違法」と根気強く告発し続けた人物だ。1941年の日本による真珠湾攻撃は米国を恐怖に陥れた。米政府は同国内の日系人12万人を「潜在的な敵」と見なし、カリフォルニア州などの砂漠地帯10カ所に強制収容所を建てて収容した。収容所内には学校・病院があり、住民自治委員会もあった。家族が生き別れることや、虐殺・強制労働のようなものはなかった。しかし、厳然たる米国市民を日系人という理由だけで強制収容したのは国家による暴力だった。

 当時大学生だったヒラバヤシ氏は「強制収容所行きのバスに乗れ」という米政府の命令を拒否し、裁判を受け1年以上にわたり刑務所生活を送った。第2次世界大戦終了後、社会学者になった同氏は1983年に大学教授の職を退くと、再び日系人強制収容の違法性を告発。米最高裁判所は87年、米政府が戦時中に日系人強制収容所を建てなければならないという軍事的理由はなかったと認め、45年ぶりにヒラバヤシ氏に無罪判決を下した。米国大統領はこれを受け「日系人の強制収容は戦時中にわれわれが犯した最悪の失敗」と謝罪の書簡を送るとともに、1人当たり賠償金2万ドル(現在のレートで約160万円)を日系人12万人全員に支払った。日本のメディアは「オバマ大統領は勲章を授与し『ヒラバヤシ氏のように立ち向かう市民がいるからこそ、この国はより良くなっていく』と述べた」と報じた。

 ヒラバヤシ氏受章のニュースを聞き、胸の片隅に「おり」のように残るものを感じた。米国に住む日系人が侵略国の出身だということを理由に、自身の意思とは関係なく歴史の渦に巻き込まれた苦しみ・無念さは当然、補償されるべきだ。70年過ぎてもそうした歴史の闇を明らかにし、償うところに米国社会の健全さがある。では、日本の戦争挑発とは何の関係もない朝鮮人たちが日本の工場に連れていかれ、奴隷のように働かされて苦労し、旧日本軍の性の慰みものとなり、原爆まで浴びることになった歴史は今、どのような形で償われているのだろうか。

 日本の植民地支配期に強制連行されたイ・ビョンモクさんとヨ・ウンテクさんが三菱重工業と新日鉄(旧・日本製鉄)を相手取り起こした訴訟で、韓国最高裁は先月「日本企業には賠償責任がある」との判決を下したが、これに対し日本政府は「個人請求権は1965年の日韓請求権協定で完全に解決されている」と判で押したようにコメントした。旧日本軍の従軍慰安婦だった女性たちが、雨が降ろうと雪が降ろうと10年以上もソウルの日本大使館前で水曜集会を続け、謝罪・賠償を求めても、日本政府は微動だにしない。韓国にヒラバヤシ氏のような人物がいないからではなく、こうした人物の声を聞く耳を日本が持たないのだ。その結果、日本は「より良い国」への道を歩めずにいる。

金泰翼(キム・テイク)論説委員
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