大阪ミナミで通り魔　３６歳無職３０回メッタ刺し

　大阪・ミナミの繁華街、中央区東心斎橋１丁目の路上で１０日午後１時ごろ、通行人の女性から「人が刺された」と１１０番があった。警察官が現場に駆け付けたところ、男女２人が血を流して倒れていた。大阪府警南署は殺人未遂の疑いで住所不定の無職・礒飛（いそひ）京三容疑者（３６）を現行犯逮捕。２人は死亡し、容疑を殺人に切り替えた。礒飛容疑者は「自殺しようとしたが死にきれず、人を殺せば死刑になれると思った。誰でもよかった」などと供述。南署は通り魔事件とみて調べを進めている。

　「キャーッ！！」「逃げろ！！」。陽気な日曜日の昼下がり。買い物客でごった返すアーケードの心斎橋筋商店街から東に１本目。ミナミの繁華街に、悲鳴と怒声が響いた。

　目撃談などによると、礒飛容疑者は飲食店前の路上で「助けて」と声を振り絞る男性に馬乗りになり、無言のまま男性をめった刺しにした。首付近や肩、脇腹など２０～３０回も刺していたという。

　礒飛容疑者は立ち上がると、ふらふらと通りを東へ。そこに女性が自転車で通りかかったとみられる。「通り魔や。はよ逃げろ」。周囲の声も間に合わず、女性は礒飛容疑者に刺された。礒飛容疑者は、再び男性のところに戻ると、駆け付けた警察官に背後から呼び止められたが、礒飛容疑者は振り返って確認した後、さらにもう１回、とどめを刺すかのように男性を刺したという。

　男性は首や腹などに計１０か所傷があり、腹部には刃渡り約１８センチの包丁が刺さった状態だった。約５０メートル離れた場所では女性が背中や腹部など数か所を刺され、自転車と一緒に倒れていた。

　礒飛容疑者は身長１７５センチ前後、短髪で、薄いピンク色のＴシャツが返り血で真っ赤だった。警察官が駆け付けたときは無言で落ち着いた様子だったが、自身も手にけがをしていた。抵抗することはなく、包丁で２人を刺したことを認めたため、現行犯逮捕された。

　礒飛容疑者は栃木県出身とみられ、調べに対し「５月下旬に新潟刑務所を出所し、昨日、大阪に来て知人の家に泊まった」と供述。動機については「自殺しようと思って、事件を起こす前に現場近くで包丁を買った。でも死にきれなかったので、人を刺して殺せば、死刑になれると思ってやった。誰でもよかった」と供述しているという。

　刺された男性は、大阪市出身で、東京都東久留米市に住む音楽プロデューサー・南野信吾さん（４２）であることが、親族により確認された。女性は所持品から大阪市内に住む６０代とみて、府警が身元の確認を急いでいる。

　死者を出した悲惨な無差別通り魔事件といえば、４年前、２００８年６月８日に東京・秋葉原で起きた無差別殺傷事件。７人が死亡し、１０人が負傷した。くしくも同じ６月の第２日曜日だった。

（2012年6月11日06時02分スポーツ報知）