特区活用による医学部新設構想を提案した黒岩祐治知事と、県医師会がもめている。「医師会に配慮してきた」とする知事に対し、医師会は「国も検討しておらず非現実的」と反対している▼発端は昨年末、黒岩知事が新潟県などと共同で国に医学部の新設解禁を要望したことだ。背景には医師不足があり、県は人口１０万人あたりの医師数が全国３９位（１０年）と特に著しい。このため、医師増員の必要性について、両者は一致している▼ただ、医師会は「新設すると廃止が難しく、人口減により将来は医師過剰になる」として定員増での対応を主張。県の検討会では、いったんは両論併記で矛を収めた経緯がある▼そうした中で知事は４月、医師不足対策よりも、国際的な医療人材の育成を前面に出す形で新設方針をぶち上げた。これに医師会は「勝手に検討会の結論を変えられた」と猛反発している。対立の結果、「医師偏在の解消」という県民ニーズが放置されることがあってはならない。【北川仁士】