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■特命調査班 〜マル調〜「震災がれき問題・大阪湾の実態」 2012/06/06 放送

 大阪北港・夢洲にある焼却灰の埋め立て処分地。

 周囲は堤防で囲まれていて、この陸地部分や水面に焼却場で燃やされたあとの灰を埋めていきます。

 ここに「震災がれき」の焼却灰を埋め立てると、周りの海に放射性物質が漏れ出すのではないかと不安視されています。

 そんな中、5日、この点について環境省が「安全」とする評価結果を大阪市に伝え、大阪市は秋にもここで最終処分する方針を発表しました。

 実は同じような海面の処分場は、大阪湾ではほかに4つあり、今回の国の安全評価がそのまま適用されると…

 兵庫、京都、和歌山、滋賀、奈良など近畿の168の自治体の受け入れが一気に進む可能性があります。

 「海面埋め立て」とは一体、どんな方法なのか。

 「マル調」が緊急検証します。




 大阪市此花区にある人口島、夢洲。

 トラックが次々と運び込んでくるのは、ゴミの焼却灰。

 毎日600トン以上の焼却灰が、ここに埋め立てられる。 

 <北港処分地の所長>
 「(広さは)約73ヘクタール。焼却灰を陸送や海上輸送で埋め立てをしています」

 国は5日、ここに基準値を満たした「震災がれき」の焼却灰を埋め立てても安全だという評価を示した。

 安全評価が出るまでに時間がかかったのは、この処分場特有の問題があった。

 国は「震災がれき」の焼却灰について土に埋めることを前提としていて、夢洲のような「海面埋め立て」は想定していない。

 放射性セシウムは水に溶けやすい性質があり、国は拡散する恐れがないか個別に評価する必要があった。

 そこで大阪市は、セシウムを吸着する鉱物のゼオライトの使用を検討。

 これを陸地部分に敷き詰め、その上に焼却灰を埋め立てる方法を示し、国は安全宣言を出したのだ。

 だが大阪湾を漁場とする漁師からは、早くも不安の声が上がっている。

 <漁師>
 「第一に風評被害です。絶対に(埋め立てには)反対です。断固として反対です」
 <漁師>
 「もし、ちょっとでも海水が汚染されていると報道された日にゃ、僕らが獲ってきた魚は絶対に売れなくなるやろ」

 こうした声に受け入れを進めた橋下市長は…

 <大阪市 橋下徹市長・5日>
 「埋め立て処分地の責任者は僕ですからね、住民説明会はしっかりやっていきたいと思ってます」

 今回の国の判断。

 実は、関西全体の「震災がれき」の受け入れに影響を及ぼす可能性がある。

 それは・・・

 大阪湾には神戸、尼崎、大阪、泉大津に、同様の「海面埋め立て場」が4か所ある。

 近畿2府4県の168市町村が、ゴミの最終処分場としている。

 つまり今回、安全性が認められたことによって、これらの処分場での埋め立ても認められる可能性が高くなったのだ。

 大阪湾での「海面埋め立て」の安全性はどうなのか。

 「マル調」は候補地の一つ、神戸沖の埋め立て場に向かった。


 国が安全性に問題ないと判断した夢洲での「震災がれき」の「海面埋め立て」。

 これによって、近畿2府4県の自治体が焼却灰を埋め立てている「大阪湾フェニックスセンター」でも、受け入れが進む可能性が出てきた。

 「マル調」は特別に許可をもらい、受け入れ候補地の一つである神戸沖の埋め立て場に向かった。

 <マル調>
 「港を出てからおよそ15分がたちました。あちらに見えるのが『震災がれき』の最終処分場の候補地である『大阪湾フェニックスセンター』です」

 埋め立て場は、四方が高い堤防によって囲まれていた。

 処分場の中に入ると、そこは船着き場のようになっていた。

 <フェニックスセンターの担当者>
 「これが揚陸機です。これで船から焼却灰をすくいあげるんですよ」

 近畿一円から集められた焼却灰は、巨大なショベルカーによってベルトコンベアに移し替えらていた。

 広さは88ヘクタール。

 甲子園球場の22個分にあたる。

 焼却灰はトラックに乗せ換えられ直接、海面に投げ込まれているが、放射性物質のセシウムは水に溶けだしやすい性質を持っている。
 
 果たしてこの方法で問題ないなのだろうか。

 <フェニックスセンターの担当者>
 「鉄の矢板を海中の粘土層まで打ち込んで、(汚染水が)漏れ出さないようにしています。それが、4方向全部囲まれている」

 「海面埋め立て」といっても、四方は堤防に囲まれ海の底まで板が打ち込まれているため、汚染水が外部に漏れだしたり染み出すことはないという。

 仮に水がいっぱいになったとしても、排出する際には浄化施設を通る仕組みになっている。

 しかし…

 <マル調>
 「この浄化施設は、放射能物質を取り除くのに対応しているんですか?」
 <担当者>
 「対応してません」
 <マル調>
 「それはまた別の機械が必要になる?」
 <担当者>
 「だと思います」


 「震災がれき」の焼却灰を埋め立てるためには、特別な処分方法や新たな設備が必要なるという。

 では、具体的にはどのような処分方法を検討しているのか。

 <大阪湾フェニックスセンター 樋口進環境課長>
 「処分場内部にはふだんから水が存在しています。ですから水に触れさせないようにすることが、(処分法の)第一に考えるべきじゃないかと考えています」
 <マル調>
 「いくつか処分方法の候補というのは考えています?」
 <大阪湾フェニックスセンター 樋口進環境課長>
 「腹案としてはいろいろ持っていますが、出来るかどうかについては、これから検討していかなくてはならないところですよね」
 <マル調>
 「オープンに出来るところまでは至っていない?」
 <大阪湾フェニックスセンター 樋口進環境課長>
 「まだそこまでは、いっていませんね」

 担当者は検討中として、具体的な処分方法についての言及を避けた。

 しかし、その後の「マル調」の取材で3つの案を軸に検討を進めていることが分かった。

 処分方法[1]「吸着案」

 まずは、大阪市と同じように放射性セシウムを吸着する性質のある鉱物のゼオライトを陸地部分に敷き詰め、埋め立てる方法。

 さらに、より安全性の高い方法も検討していた。

 処分方法[2]「容器づめ案」

 その一つは耐久性の高い容器をつくり、「震災がれき」の焼却灰をほかのゴミの焼却灰と一緒に容器に詰め、埋め立てるという案だ。

 処分方法[3]「コンクリート詰め案」

 <マル調>
 「他にも耐久性の高い巨大な袋に『震災がれき』の焼却灰を詰めるという案が検討されています」

 もう1つは「震災がれき」の焼却灰を、ほかのゴミの焼却灰と袋に詰め、コンクリートなどで周囲を堅めたうえで、埋め立てる方法。

 放射性物質は原則、拡散すべきではないとする専門家も焼却灰を固める処分方法は、一定の効果があるという。

 <放射線に詳しい神戸大学 山内和也教授>
 「放射性セシウムを固めてしまう。そういうちょっとした手当てをしておけば。もし大きな波をかぶっても、海水に接することがあっても、かなり(放射能の流出は)防げると思うんですよね」

 だが、別の専門家は「震災がれき」の焼却と同様、どれだけ万全な対策をとっても、100パーセント安全とは言い切れないと指摘する。

 <京都大学原子炉実験所 小出裕章助教>
 「放射能を浴びたゴミは一般廃棄物とは別に管理することになっていましたし、産業廃棄物と混ぜてもいけないということでこれまでやってきた。もともと原則に反することをやろうとしているわけで、私は反対です」

 今回の国の判断で、「フェニックスセンター」も安全性が認められる可能性は高まった。

 放射能の安全性への意見はわかれる中、関西でも受け入れの動きが加速しようとしている。




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