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【社会】

公式戦で女流プロに初勝利 ポーランドの大学生 ステチェンスカさん

過去の対局を再現し、北尾まどか女流初段(左)と指し手を検討するステチェンスカさん=東京都新宿区で

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 外国人初の女流棋士を目指すポーランドの大学生カロリーナ・ステチェンスカさん(20)が、将棋の公式戦で外国人として初めて、女流プロに勝利した。歴史的な一勝に「夢に一歩近づいた気分」とはにかみながら話す。日本が、世界が、その成長に熱い視線を送っている。 (鈴木学)

 青い目が将棋盤の左右に忙しく動く。五月十九日、東京都内で行われたリコー杯女流王座戦一次予選。海外招待選手のステチェンスカさんは、初戦で高群佐知子女流三段と対局した。飛車、角の「大駒」がよく動くダイナミックな棋風。プロ相手に、得意の振り飛車で勝った。

 続く千葉涼子女流四段に敗れ、一次予選突破はならなかったが、「ギリギリの勝負で、勝った時はとてもうれしかった」と声を弾ませた。首都ワルシャワの大学で情報技術(IT)を学ぶ二年生。来日は二度目で、今回はトーナメント戦に出るため五月上旬から約一カ月間、日本に滞在した。

 漫画「NARUTO」で登場人物が指していた将棋に興味を持ったのが十六歳の時。英語を公用語とするインターネットの将棋道場で腕を磨き、現在アマ四段。独学の外国人では、かなりのレベルだという。

 今回の勝利で、「棋士への道が現実に見えてきたと思います」と話すのは、道場のアドバイザーを務める北尾まどか女流初段(32)。来日をサポートしている北尾さんは「勝負どころでの踏み込みといった勝負勘がよく、棋士向き」と将来性を高く見込んでいる。

 今回の快挙には世界の道場仲間も沸き、祝福メッセージが相次いだ。ステチェンスカさん自身、彼らの期待も感じたという。それがプレッシャーになるのではなく、「力になる」と言うあたり、やはり勝負師に向いているようだ。

 来日中は外国人に人気の原宿、秋葉原などには行かず、連日都内の将棋道場通い。空き時間は詰め将棋の問題に向き合う将棋漬けの毎日だ。「将棋は取った駒を使える数少ないゲームで、複雑さが最後まで続くのがおもしろい」

 帰国直前の二日には、女流タイトル戦「マイナビ女子オープン」の予備予選にも出たが、初戦で敗れ、敗者戦も勝ち上がれずに幕を閉じた。当面は大学卒業が目標。女流棋士の夢を実現するには日本で生活し、日本語を覚え、棋力もさらに磨くなどハードルは高い。

 見守る北尾さんは、将棋連盟に奨学金制度がない点などサポートシステムを課題に挙げながら、「本気の覚悟を持って、卒業後には来日してほしい」と願う。

 

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