東京電力福島第1原子力発電所事故を検証する国会の事故調査委員会(黒川清委員長)は8日、清水正孝東電前社長を公開で聴取した。原発からの全面撤退を申し出たとされる問題で、清水氏は改めて否定した。東電と官邸との意思疎通不足が官邸の不信と過剰な介入を招いたと事故調は指摘。国と事業者がもたれ合う中で、危機管理体制をあいまいにしてきたツケが浮き彫りになった。
福島第1原発では昨年3月14日、3号機が水素爆発し、2号機も爆発の危険が高まった。清水氏は海江田万里元経済産業相らに電話して作業員を退避させる意向を伝え、全面撤退と受け止めた菅直人前首相は東電本店に乗り込み「撤退はありえない」と発言した。これについて
| 政 府 | |
|---|---|
| 菅直人 前首相 | 撤退と聞いてとんでもないと感じた。「撤退はありえない」と伝え、清水前社長は「わかりました」と答えた |
| 海江田万里 元経産相 | 「撤退」でなく「退避」という言葉があった。一部を残すという話は一切なかった |
| 枝野幸男 前官房長官 | 清水前社長から全面撤退の趣旨の話があった。部分的に残すという意味でなかったことは明確だ |
| 東京電力側 | |
| 勝俣恒久 会 長 | 全員退避の打診は事実と違う。清水前社長は作業に関係ない人たちの退避を検討したいという話をした |
| 清水正孝 前社長 | 全員撤退は念頭になかった。厳しい状況が続けば、一部の人を残すという認識だった |
清水氏は「全員が離れることは考えていなかった」と反論した。
事故調は吉田昌郎前所長にも聴取し、東電は全面撤退を考えていなかったと判断。「官邸への伝え方が最大の問題」として、清水氏のあいまいな説明で意思疎通がうまくいかず、官邸の不信を招いたと結論づけた。
両者が相互不信を高めた背景には、危機管理の責任の所在が不明だったことがある。問題の根は、国が原子力利用を推進して民間企業が原発事業を担う「国策民営」体制にあったと、民間の有識者が設けた福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)は指摘した。
事故調は6月中に最終報告書をまとめる。危機管理の不備を生んだ無責任の積み重ね。こうした「負の歴史」にどこまで踏み込めるかが焦点だ。
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