武雄市の新・図書館構想

 武雄市の新・図書館構想
http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1205/07/news068.html
について日本図書館協会が見解を発表された。http://www.jla.or.jp/demand/tabid/78/Default.aspx?itemid=1487
出された論点は公立である限り、今の法制度を前提にする限り正しい論点だとおもう。 しかし、図書館の機能、住民目線に徹するならば、今回の武雄市の構想にはあまり問題はないのではないか。
 例えば我々は本屋で本を買い、クレジットカードを使う。本のみならずどこで何を買ったか、何を食べたか、クレジットカード会社や店に個人情報を垂れ流して生きている。民間の受託事業者によるデータ管理も同じだ。守秘義務が守られ、かつ本人同意があれば問題ないのではないか。
 ちなみに「民間企業に図書館の業務を委託したら民間人が誰が何を借りたか、知ることになる。だから危険だ」という考えた方は形式論理としては正しく見えるが、現実に照らすと全く間違っている。受託事業者は守秘義務に縛られている。情報漏えいしたら信用問題だから必死で死守するだろう。もちろん、変な社員がいて万一の守秘義務違反がないとはいえない。しかしそれを恐れていたら民間への業務委託なんか永遠にできない。そもそも公務員が個人情報を漏えいさせることだってあるし、その管理は企業に比べて絶対に完璧だと断言できるのだろうか。

 だがこの問題の本質は、こうしたことにどどまらない。そもそも図書館を地方自治法の「公の施設」と位置づける制度自体がおかしい。国による過剰規制なのだ。規定自体を廃止すれば今回の問題は地域の判断というレベルに落ち着く。
 図書館を直営にするか、民間に任せるか、業者にどこまで頼むかは各自治体が自由に決めればいい。自治法を改正して公の施設の規定は削除する。つまり完全自由化したらいい。
 そうしたら住民判断、議会の判断という形で真剣な議論が起きる。今はどうも「市役所VS図書館協会」の論争になる気配だ。だが住民そっちのけの制度論は不毛であり、現場現地での住民の判断が重要だろう。

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登録日:2012年 05月 31日 08:19:03

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プロフィール
上山信一
(男)
慶應大学総合政策学部教授。大阪市生まれ54歳。専門は企業・行政機関の経営戦略と組織改革。都市・地域再生も手がける。旧運輸省、マッキンゼー共同経営者等を経て現職。国交省政策評価会(座長)、大阪府と大阪市の特別顧問、新潟市都市政策研究所長、日本公共政策学会理事、各種企業・行政機関の顧問や委員等を兼務。府立豊中高、京大法、米プリンストン大学修士。著作等 ツイッター@ShinichiUeyama
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