【コラム】
「違法にならないネットライフ」第3回は、自分のブログに、他人のブログやニュース記事のリンクを張る場合、どのようなことに気をつけたらいいか、という問題です。数年前、ニュースサイトの記事への直リンク、いわゆる"無断リンク"を巡りちょっとした議論が起きたことがあります。一時は、"無断リンクお断り"という見解を示していたようなニュースサイトもありました。現在の状況はその逆。RSSフィードなどによって積極的に記事を外部へ配信し、ブロガーに取り上げてもらうなどしてサイトへの導線強化を図るようになっています。かつての"無断リンク"論争は終焉し、ブロガーが気兼ねなくニュースサイトの記事をリンクとともに取り上げられる環境が作られています。
ただ、問題が完全にないわけではありません。実はリンクの取り上げ方次第では、リンク先ホームページの開設者などに対する権利の侵害となるケースがあることはご存じでしょうか。ニュースサイトのように記事配信のシステムが整っていれば問題にはなりにくいでしょうが、そうでないサイトからブログエントリーや記事のリンクを利用する場合は、気をつけたほうがいいかもしれません。(編集部)
ブログを書いていますが、他の人のブログや面白かった映画を紹介する目的で、その人のブログや映画のホームページなどにリンクを張る場合、どのようなことに注意したらいいでしょうか。また、ニュースにコメントする目的で、ニュースにリンクを張った上で、そのニュースの一部をブログに掲載したいと思いますが、問題はないでしょうか。
リンクを張ること自体は原則として法的問題は生じないと考えられていますが、張り方によっては問題が生じる可能性があります。また、ニュースの引用については、コメントする本文と引用したニュースとが明確に区別される状態であり、引用したニュースが従、コメントした本文が主であるような関係が認められなければなりません。
リンクそのものは、リンク先のファイルの所在を示すものに過ぎず、リンク先の著作物について、著作権の対象として定められた複製、公衆送信などの利用行為を行うものではありません。したがって、リンク先から許諾を得ていない場合であっても、著作権侵害となるものではありません。その他の点でも、リンクを張る行為そのものは、基本的には法的問題を生じるものではありません。
しかし、次のようなリンクの張り方には注意しなければなりません。
まず、リンクを張る際には、リンク先に関する紹介文を付けるケースが少なくありません。しかし、紹介の仕方次第では、リンク先ホームページの開設者などに対する権利の侵害となることがあります。例えば、悪ふざけをして「リンク先は人殺しのサイト」などといった説明文付きでリンクを張る行為は、名誉毀損となるおそれがあります。このような場合には、差止請求や損害賠償請求の対象となるだけでなく、場合によっては犯罪となることもありますので、注意しなければなりません。
次に、映画、書籍、マンガなどの著作物を紹介する際に、例えば映画のDVDのカバーや書籍の表紙などをサムネイルの形で表示し、サムネイルをリンクとして作品を紹介することがよく行われています。
DVDのカバーや書籍の表紙などについては、一般的に著作権が及ぶものと考えられ、これをサムネイルの形で表示することは、著作権者の複製権(著作権法第21条)や公衆送信権(同法第23条)を侵害する可能性があります。公衆送信権の対象には、送信可能化することも含まれます。また、商品を紹介する場合には、その商品の商標権を侵害する可能性もあります。
もっとも、アフィリエイトにおいて、商品写真の形で提供されている画像を基にオンラインショップにリンクを張るような場合や、公開されているブログパーツを利用する場合には、そもそもリンクを張る際に当該著作物を使用したり、ブログ上で利用したりすることが予定されていると考えられ、著作権者による許諾があるものと考えられます。
したがって、映画のDVDや書籍を紹介する際には、著作権者の許諾が認められるようなソースから商品写真などを入手して掲載すべきでしょう。リンクやブログパーツとして利用できる範囲については、通常は利用規約に定められていますので、事前に利用規約の内容を検討すべきです。
新聞社などが報道し、ウェブ上で公表しているニュース記事に対して、そのニュースのURLを記載することによってリンクを張ることは、特に法的問題は生じないと考えられます。
では、ニュースの見出しを明示し、見出しをリンクとしてニュース記事にリンクを張ることは問題があるでしょうか。まず、著作権法との関係が問題になります。著作権法による保護を受けるためには、著作物、つまり創作性のある表現でなければなりません。一般的にニュース記事自体は著作物とされていますが、ニュースの見出しについては、誰が書いても同じになるような簡潔な事実の記述にすぎず、創作性が認められないことが多いと思われます。
ニュースの見出しをリンクとしていた事例に関して近時の裁判例も「報道対象となる出来事等の内容を簡潔な表現で正確に読者に伝えるという性質から導かれる制約があるほか、使用し得る字数にもおのずと限界があることなどにも起因して、表現の選択の幅は広いとはいい難く、創作性を発揮する余地が比較的少ないことは否定し難いところであり、著作物性が肯定されることは必ずしも容易ではない」(知財高裁平成17年10月6日判決・読売オンライン事件)として、見出しに著作物性が認められにくいことを明らかにしています。
しかし、この判決も、例外的に著作物性が認められる場合があることを認めており、見出しをそのままリンクとすることが複製権や公衆送信権の侵害となることがないわけではありません。
また、仮に著作権としての保護を受けなくても、一定の場合には、見出しのコピーをそのままリンクとして利用する行為は、不法行為として損害賠償請求の対象となりえます。前記判決も、営利の目的をもって反復継続して、見出しが作成されて間もない時期に、見出しのコピーをリンクとして利用する行為が不法行為にあたると判断しています。
次に、ニュース記事の一部をブログの中で引用することには、問題があるでしょうか。ニュース記事自体は著作物なので、その一部をそのまま利用する行為は、原則として著作者の複製権、公衆送信権を侵害することになります。
もっとも、著作権法は一定の場合に著作権の制限規定を設けており(同法第30条以下)、ニュースにコメントする目的で、ニュースの表題をリンクとしてニュースにリンクを張ったり、また端的にニュース自体を複製してブログに掲載したりすることが、「引用」(同法第32条)とされる場合には、著作権侵害とはなりません。
では、どのような場合が「引用」にあたるのでしょうか。この点については、前回掲載の記事で詳しく述べたため、ここでは詳しくはふれませんが、基本的には(1)明瞭区分性、(2)主従関係の二つの要件が必要とされています。
したがって、ニュースをブログに掲載するにあたっては、どこからどこまでがニュース記事であるのかを明確にする必要があります。例えば、引用したニュース記事を枠で囲んだり、段落を下げたりすれば、どこからどこまでが引用したニュースなのかが明確になることになります。なお、引用にあたっては出所の明示を行わなければならない場合があるので(同法第48条第1項)、引用したニュースの引用元を記載しておくべきです。
次に、主従関係については、引用した著作物が従であり、論評が主であると認められなければならず、主従関係があるか否かについては、引用した目的や、引用した著作物あるいは論評の性質、それぞれの分量などから総合的に判断されるものとされています。
ご質問のように、ニュースの論評の目的でニュースを引用し、これに自分の意見を述べる形で論評を加えている場合には、主従関係があると考えられることも多いのではないでしょうか。
(安藤広人/英知法律事務所)
弁護士法人 英知法律事務所
情報ネットワーク、情報セキュリティ、内部統制など新しい分野の法律問題に関するエキスパートとして、会社法、損害賠償法など伝統的な法律分野との融合を目指し、企業法務に特化した業務を展開している弁護士法人。大阪の西天満と東京の神谷町に事務所を開設している。 同事務所のURLはこちら→ http://www.law.co.jp/
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