焦点:フェイスブックのIPO、幹事行は法に触れたのか
[ニューヨーク 22日 ロイター] 米ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)大手フェイスブック(FB.O: 株価, 企業情報, レポート)の新規株式公開(IPO)をめぐる問題を調査している規制当局は、上場間際の企業に関してアナリストが顧客にどんな情報を伝えることが許されるのかという、証券取引法の中でも通常は明示されていない分野に向き合わざるを得なくなるだろう。
フェイスブックと同社のIPOの引受幹事を務めた投資銀行が問われているのは、どのような方法で、またいかなる理由で、これらの銀行の株式アナリストがIPOに先立って業績見通しを下方修正したのかという点だ。
主幹事のモルガン・スタンレー(MS.N: 株価, 企業情報, レポート)のインターネット株担当アナリストは、IPOの数日前にフェイスブックの売上高見通し引き下げを顧客に伝え、さらにその情報を他の一部の投資家は知らなかった、とロイターが22日伝えた。
関係筋によると、同じ幹事のJPモルガン・チェース(JPM.N: 株価, 企業情報, レポート)とゴールドマン・サックス(GS.N: 株価, 企業情報, レポート)も、フェイスブックのIPOのロードショー(投資家説明会)期間中に業績見通しを修正したとされる。
こうした中でマサチューセッツ州当局が22日遅くに、モルガン・スタンレーに対してアナリストと顧客のやり取りをめぐり召喚状を出した。証券業界の自主規制機関である金融取引業規制機構(FINRA)もこの問題で調査に乗り出す意向を表明し、証券取引委員会(SEC)のシャピロ委員長は、フェイスブックのIPOがもたらした不特定の諸問題を調べるとしている。
幹事銀行がフェイスブックのIPO手続きにおいて秘密情報に接することができる立場にいた点を考えれば、アナリストが情報開示ルールに違反したかどうかを調べる上で、複数の規則や規制を援用できる可能性がある。
例えばSECが定めた「ガン・ジャンピング」と呼ばれる規制は、IPO企業について発行目論見書以外で投資家と行える対話に制限を設けている。
SECの法務担当者だったミシガン大のアダム・プリチャード教授(証券取引法)によると、ガン・ジャンピングに基づけば、伝えられる情報は目論見書と必ず一致していなければならない。ただ、口頭での対話においては例外が存在するという。
また公開企業は選別的に情報開示を行うと違法となる可能性があるが、証券取引法の専門家によるとフェイスブックが公開前に幹事銀行に与えた情報にはこのルールは当てはまらない。
幹事銀行で働くアナリストにIPO企業に関するリポートを株式公開前に発行することを禁じるルールもある。しかしペンシルベニア大学ロースクールのジル・フィッシュ教授は、アナリストによる口頭での情報伝達は、調査リポートの発行を禁止したこのルールに抵触しないかもしれないとの見方をしている。
同教授は「アナリストが顧客にIPO企業の情報開示の意図や目論見書の内容について単に警告する程度なら、このルールに沿っていないと言えるかは分からない」と話した。
2003年に規制当局と投資銀行が合意したルールの出番となる可能性もある。大手投資銀行は、アナリストが内心軽視しているようなIPO案件を盛り上げるために調査部門を利用していると非難されたことを受け、調査部門の独立性を確保する対策を実行することに合意。例えばアナリストに対して、ロードショーなどの投資家への勧誘活動に参加するのを禁止している。
法律事務所のドージー&ホイットニーのパートナー、トーマス・ゴーマン氏は、投資銀行のアナリストが株式公開の引受担当者と一緒に仕事をしているのが分かれば、この合意に違反する恐れがあると指摘する。
その上で「モルガン・スタンレーの調査部門は、主幹事を務めているIPO案件に関して意見を言うべきではない」と語った。
(Andrew Longstreth記者)
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